政策

社説 ステータス管理導入1年 更なる仕組み浸透を

 レインズに「ステータス管理」機能が導入されてから1年が経過した。レインズは不動産業者間のシステムであり、一般のユーザーが利用できるものではなく、例えば自己の所有物件の売買を任せた売主は、不動産業者から業務の処理状況報告を受けることはできたが、自分の物件が今どのような契約状態なのかを自ら知ることはできなかった。

 導入の目的は、売主の了解なく事業者の判断で物件の紹介を拒否する事案を防ぐことだ。これにより、取引の透明性が高まりいわゆる囲い込みと称する、媒介報酬を売主、買主双方から受領するため、物件情報を適切に開示しない行為の防止につながる。

 1年経過し、導入によるシステム上のトラブルなどはほとんどない。利用している不動産業者においても、「ステータス管理という言葉そのものが業務にすんなり入っていて、その存在すら忘れてしまう」という人もいるようだ。国土交通省不動産業課に聞くと、全国で1日100人ほどの売主がステータス管理情報にアクセスしているようで、認知度が極端に低いわけでもなく、それだけ、順調にいっているということだろう。

 ただ、だからといって、囲い込みが劇的に減少しているとは言えない。ヒアリングした不動産業者によると、ステータス管理を避けるため、レインズ登録の必要がない一般媒介契約を結んで、他業者と契約した場合に「規約違反」のペナルティ条項を設けるなどの行為もあるとのことだ。「媒介契約」や「レインズ登録」の認知度の低さから招来した事例であり、レインズが不動産業者間のシステムにとどまっている以上、一般ユーザーへの訴求力は弱くなってしまうことは避けられないが、ステータス管理機能の更なる喧伝の必要性がある。

 また、囲い込みが論議され、ステータス管理導入の大きな要因となった、自民党の中古住宅市場活性化に向けた提言では、囲い込みが減少しない場合、宅建業者への罰則規定を設けるべきとされている。ステータス管理の効果について、しっかりと検証することを望む。

 併せて必要なのが、日本版MLS(Multiple Listing Service)の実現だ。米国で導入されているシステムで、不動産業者だけでなく、ほぼすべての物件情報が一般消費者でも閲覧できる。知名度もレインズとは比較できないほど浸透しており、売主は適正な売却価格を把握し、買い手は周辺物件と比較して価格を検討できる。不動産流通の活性化には情報の透明性と正確性、充実化が必須である。囲い込み行為を許していては、不動産流通のスピードが遅いままになってしまい、消費者の信頼低下にもつながる。より情報開示を進めていくベクトルを上げる必要があろう。