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大言小語 インテリアは重要だが

 昔、吉田兼好は『徒然草』の中で〝住まいは人なり〟と言った。住まいを見ればおおよそ、そこに住む主(あるじ)のことが推察でき、「なかなかいい趣味だなぁ」などと思わせることは味わい深いと述べている。

 ▼ところが、現代のマンションという住まいは外観と共用部分は共通だから、住む人の人柄がしのばれるとしたら室内のインテリアしかない。しかし、室内は第三者からは見えないし、日本は自宅に人を招くという文化が薄れてしまったから、吉田兼好が現代にいたら「住まいは人なり」と言ったかどうか。戸建て住宅も大型分譲地などでは似通った家が並ぶから同じである。

 ▼一方オフィスも、最近は社員がリラックスして創造性を発揮しやすいようインテリア(空間設計)が工夫されつつある。雰囲気のあるカフェや、外部のレンタルスペースなどで仕事をする人も増えていて、それぞれの空間提供者はその雰囲気づくりに力を入れる。高級ホテルがロビーや室内のインテリアを高額で一流デザイナーに委嘱するのは当たり前となっている。

 ▼しかし何かが欠けている。住まい、オフィス、カフェ、ホテル、居酒屋などの各拠点がどんなに快適な空間であっても、それらを包み込むまち自体がヒューマンスケールを超え、移動にも時間が掛かれば、真の快適性は生まれない。コンパクトシティが注目されるゆえんは、そこにもある。