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大言小語 頼り、頼られ

 最近の住宅・住生活産業のテーマの一つに、家事の負担軽減がある。家電メーカーをはじめ住設メーカー、住宅会社は競うように主婦目線の家事軽減を謳った製品やサービスを続々と商品化している。取材を通じて聞いたある研究者の見方によれば、便利な製品やサービスが商品化され、一見、家事が楽になっているように感じられるものの、昔と比べて明らかに家事の中で減ったといえるのは裁縫ぐらいらしい。

 ▼例えば、洗濯。一昔前は、使っては干すのを何度も繰り返してタオルを洗濯するのが普通だったが、近頃は使うたびに洗濯するのが当たり前になっていると指摘する。衣服なども同様の傾向で、以前よりも衛生面に気を使う生活習慣がしみついていることが背景にあるらしい。

 ▼製品やサービスが部分的に家事を楽にしてくれているのは事実だが、それを使う側が振り回されているような印象もぬぐえない。時代は一億総活躍社会、女性の働きやすい社会を目指して突き進んでいる。共働きが一般家庭の主流となり、主婦の負担は重くなるばかり。

 ▼そうした社会だからこそ、家事、育児を進んで手伝う男性も増えてきた。手の空いた家族が家の仕事を手伝う、時にはお隣さんに頼るのも昔はごく普通だった。特に都市部ではすたれがちだが、「人に頼り、頼られたり」が当たり前の社会をもう一度根付かせていきたいものだ。