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大言小語 たまかな暮らし

 最近、「たまか」という言葉があることを知った。「たまかな家」「たまかな人」のように使う。辞書を引くと倹約でつましいさまをいうようだが、単に質素で地味というのではなく、言葉の響きから、もっと豊かな印象を受ける。

 ▼「東京定借事業研究会」を立ち上げた福島美邦子さんは、異業種の出身。きっかけは、自分が家を建てようとしたときに感じた疑問だった。エリアを決めて物件を探し始めてみると、予算のほとんどが土地代に消えてしまう。思い描いていた内装やインテリアはあきらめざるを得ない。それならば定借で土地は借りればいいと思ったが、一般消費者の自分が手に入れられる借地の情報は限られていたという。

 ▼土地を所有することにこだわりを持つ人が減っている。今年発表された国民の意識調査によると、土地を有利な資産として考える人の割合は93年には6割を超えていたが、今では3割まで低下している。一方、有利な資産と思わない人の割合は2割→4割へと増加している。

 ▼大切なのは所有形態ではなく、どのように暮らすか、ではないか。土地は所有しないで、その分の資金で納得のいく家を建てるほうが賢いと考える人が今後増える可能性がある。賃貸住宅でも今流行のシェアハウスが案外、居心地がいいかもしれない。「たまかな暮らし」をするための選択肢はもっとあっていいと思う。