政策

社説 新卒採用に一定のメド 学生に選ばれる業界へ

 9月も下旬となり、各企業とも17年卒業予定者を対象とした採用活動について、ほぼメドをつけたことだろう。

 前年は、日本経済団体連合会(経団連)が面接開始を8月に遅らせる指針を出したため、人事担当者から「短期間での採用競争により様々な弊害が出た」といった意見が多く出た。今回は6月開始へと前倒しとなったわけだが、採用側、そして何より学生にとって、就職活動のスケジュールが年ごとにコロコロ変わることのメリットは何もないはずだ。経団連は、採用企業と学生に「今年のスケジュールはどうなるのか」といった無用の心配をかけない対応を、しっかりと行っていくべきだ。

 住宅新報社が半年前、主要な住宅・不動産会社を対象に実施したアンケートによると、今回の採用について前年よりも「増やす」と答えた企業の割合は32.5%、「横ばい」が65.0%に上った。ここ数年は増加基調にあり、フレッシュな人材が業界に多数入ってくることは大いに喜ばしいことだ。

学生に関心あるテーマ

 近年は、「街づくり、地域づくり」や「コミュニティ」といったテーマに関心のある学生が増えているようで、「人や社会への貢献」に興味を示す傾向が高まっている。また、住宅政策の大きなテーマである「ストック活用」、更に、政府が掲げる「地方創生」を実現できる業界の一つとしての魅力もある。学生を選ぶだけでなく、学生に選んでもらうためには、これらのテーマを企業課題として積極的に取り組むことが必要になりそうだ。

新たな発想を

 地方創生を実現するためには、より多くの若くて優秀な人材が必要だ。Uターンで故郷に戻る新卒者もいるだろう。これまでの学びをしっかり故郷のために生かしてほしい。新たな発想や展開が、閉塞感を打開する何よりの薬となる。

 また、情報技術の高度化により、以前にも増して住宅を販売する難しさが高まったと言われている。ただ、高額な商品を扱う上で、根本的なものとして求められているのは「信用」と「信頼」。顧客に対して、安心感を持ってもらえる言動や態度がより重要視されるだろう。

 信用と信頼を得るには、何より専門家としての豊富で正確な知識が必要になる。顧客に対して最適な住宅を〝処方〟するには、知識は必要不可欠だ。その上で、〝人間力〟を磨く努力が必要だ。

 住宅・不動産業界は、「やりがい」が最も高い業界の一つ。真のスペシャリストを目指す「意気込み」を持ち続け、日々奮闘していくことを期待する。