政策

社説 空き家活用策の検討 〝機動力〟発揮できる態勢を

 このところ、「空き家」の文字が紙面に載らないことがない。有効活用できる空き家をいかに流通市場に乗せるか。官民一体となった試行錯誤が繰り広げられている。

 現在、自治体ごとにある「空き家バンク」の情報を、全国共通システムとして集約しようという検討が国土交通省内で行われている。一元化により、利便性の高い検索システムを構築しようという狙いだ。自治体や宅建業者などで構成される「地域協議会」をエリア単位で結成し、空き家の有効活用策の検討、具体的なマッチング作業などを行うとしている。

 ここでキーとなるのは、やはり宅建業者だ。現在、それぞれの自治体にある空き家バンクでは、システムの利用状況に大きな格差が出ている。その中で、活発に利用されている空き家バンクは、運営について宅建業者との連携がうまくいっているケースが多い。民間ならではの創意工夫、そして何より、不動産のプロとしての専門知識。宅建業者が機動力を発揮できるよう効果的に組織化されている。

 既存住宅流通活性化のためには、言うまでもなく宅建業者の力がなくてはならない。流通活性化を重要政策課題の一つとして掲げる国としても、宅建業者が存分に力を発揮できる環境を整えるべきである。

固定資産税情報の公開

 流通活性化の促進のために、固定資産税情報の公開を検討する動きも出てきている。空き家の所有者が分からないことが原因で、流通が阻害されるといった問題を解決するためだ。空き家バンクは、「空き家を何とか活用したい」と積極的に考える所有者が活用するシステム。一方、積極的な活用の考えがそれほどでもない、もしくは空き家バンクなどの存在を知らない所有者に対して、積極的な流通促進策をこちら側から提案できるよう検討されているのが固定資産税情報の公開だ。いわば、所有者に対する「両輪」としてのアプローチといえる。

 この固定資産税情報の公開については、所有者の合意の取り方や、その情報を取得できる人の範囲をどのようにすべきかなど根本的な検討課題がまだ残されている。慎重に議論すべきこともあるだろう。ただ、忘れてならないのは、空き家バンクがうまく機能している事例を見ても分かるように、流通活性化のためには宅建業者の力はなくてはならないということだ。

 仮に空き家の所有者が分かったとしても、その先の有効活用策が魅力的なものでなければ流通促進にはつながらない。宅建業者も更なる研鑽が必要だ。ただ、その環境を少しでも整える取り組みは、国にぜひ期待したい。