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大言小語 居酒屋の「予約」

 居酒屋研究者として興味深いテーマは「予約」の是非である。旨くて安くて感じよしの3拍子揃った店は当然満席であることが多い。開店時刻草々でもない限り、入れるかどうか分からない。これはかなりのプレッシャーだ。客の心理は身勝手なもので、自分だけには特別サービスを求めている。そのためか近頃は居酒屋なのに、しかもそこのカウンター席を予約している客が散見される。

 ▼しかし、これは店側にリスクが発生する。さすがに〝予約料〟は取れないから、予約した時間になっても現れなかった場合、何分待つべきかが定まっていない。待ち切れずに一般客を入れた直後に予約客が来たらトラブルになりかねない。やはり、居酒屋に「予約」は似合わない。居酒屋はあくまでも庶民の店である。公衆の場所でもある。お弁当を食べるために公園のベンチを予約することができないのと同じだろう。場所がなければ、「仕方ないか」と諦めるのが庶民である。

 ▼先日、有名なチェーン店で「満席です」と入店を断られた若者たちが、「空いたら携帯に電話をしてもらえるか」と頼んでいる光景に出くわした。なんとも身勝手である。「自分たちだけには特別サービスがあっていいはず」という気持ちは一体どこから生まれてくるのだろう。彼らが、庶民の上に立つ、ある種の特権意識を持った者たちではないことを祈りたい。