総合

社説 各地で進むインフラ整備 地方再生は不動産業の出番

 九州、北陸、北海道と相次いで地方の主要都市へ新幹線が伸び、27年には東京と名古屋間を結ぶリニア中央新幹線の開通も控えている。外国人観光客が2000万人に迫る勢いで増え、観光需要の高まりを受けて地方都市の中には、主要な空港・港湾の交通インフラを見直す機運も高まる方向にあり、地方都市に経済活性化を促す原動力となりつつある。

 生活や就労の場、再開発やまちづくりといったインフラを支えている不動産業にも追い風となることが期待される。しかし、こうしたインフラ整備の進展だけでは、必ずしも地方都市のメリットにならないことは過去の例からも明らかだ。

ストロー効果も

 分かりやすい事例として挙げられるのが新幹線のストロー効果といわれるデメリットだ。新幹線が開通して、「ひと・モノ・カネ」が集まる恩恵を受けられる地方都市が存在する一方で、大都市圏にそれらの多くが吸い上げられてしまうデメリットのほうがむしろ大きい地方都市も多く存在しているのも事実だ。大都市圏を除けば、新幹線の影響は大なり小なりストロー効果のデメリットのほうが大きいと指摘する専門家の声すらある。経済基盤が脆弱な地方都市は多く、勝ち組と負け組の二極化がこの先、更に進む可能性も否定できない。

 ある大学教授はこう指摘する。「地方はかつて都会に米と人材を提供する見返りとして、国から公共事業や補助金を得て、観光客や工場を誘致して経済成長してきた」と。今日の公共事業の大幅な削減や国の財政ひっ迫が過去のモデルを行き詰まらせ、地方衰退の一因になっていることを示唆するものだ。更に少子高齢化がこれに追い打ちをかけるこの先、過去の成功モデルに依存し続けることには限界がある。

 政府の「地方創生」の大号令を受けて、閉そく状況にある地方都市の間で持続的な経済基盤を再構築していくための対策が急ピッチで始まっている。その成否のカギを握るのは、「ひと・モノ・カネ」が集まるハード・ソフトを地方都市におけるまちづくりでも構築していけるかにかかっている。

 焦点は次のポイントに絞られる。域外への人口流出を抑え、その雇用の受け皿をつくることと、地域同士が連携して圏域の可能性を高め合う取り組みも重要となる。

地域循環の金融を

 また、地域経済を支えている金融の在り方にも変革が必要だ。地方の金融機関の多くが国債への投資に意欲を見せるのを、投資先が極めて限られる地方だからという理由だけで片付けるべきではない。地域の資金が最優先で地域に循環する金融の仕組みがもっと模索されてしかるべきだ。

 一昨年、地方中心市街地に再開発を促す税制措置が創設され、生き残りをかけた地方都市のこれらの取り組みを下支えする不動産業への期待も高まる。大手・中小を問わず、求心力のある街づくり、再開発、街のマネジメントに不動産業の英知を結集していくチャンスが到来している。