政策

社説 レインズ、ステータス管理導入 消費者目線を重視しよう

 新年早々、全国四の不動産流通機構(レインズ)で、取引状況の登録制度導入と売却依頼主専用確認画面の提供が始まった。売り物件が公開中なのか、購入申込み書を受け付けている段階か、あるいは売主の都合で一時紹介を停止している段階かといった状況を明示しなければいけないという規定で、いわゆる「ステータス管理」と呼ばれるものだ。

 ステータス管理機能が導入されたのは、一部の業者が、売主・買主双方から仲介手数料を受領する、いわゆる両手取引を目的として、正当な理由がないのに、他の業者への物件の紹介を拒否したり、公開中であるにもかかわらず、申し込みを受付けているなどとする悪質な「囲い込み」を行っているからだ。

 不動産流通市場活性化のためには、取引の透明性を担保することが不可欠だが、こうした囲い込み行為は、活性化の妨げ以外の何物でもない。そこで、物件の現在の状況を登録すると共に、その状況を売主が閲覧できることで、売主の了解なく、事業者の判断で物件の紹介を拒否することを防止するわけだ。

更なる徹底を

 1月4日からスタートしたわけだが、国土交通省などによると、一部のレインズで登録証明書の表示の不備があったが、概ね順調に運用されている。今後も適切な運用が行われるよう期待したい。

 そのためには、不動産事業者が取引状況の変化を適宜・適切に登録事項のステータスに反映させることだ。例えば、買主から物件への申し込みがあった場合、ステータスを「公開中」から、「書面による申し込み有り」に変更しなければならない。この際は売主の了承などを得て、その日の翌日から2日以内に変更する必要がある。まずは、こうした運用の徹底がしっかりなされるか注視したい。今後、売主側にアンケートを実施するなどして、ステータス管理機能の使い勝手や得られる情報の種類、内容、表現などの更なる充実も期待するところだ。

 今回のステータス管理機能の導入によっても、囲い込みなどの発生に改善が見られない場合、政府・与党は、行政処分や罰則などの宅建業法の強化を検討している。また、現在、宅建業者内の検索システムであるレインズについて、登録情報の充実や利用ルールの強化なども検討されている。

買主への配慮も

 不動産流通市場を活性化させるためには、透明性だけでなく、情報の非対称性の緩和が求められる。ステータス管理機能の導入で、売主である消費者目線が不動産取引に入ってきたことはもちろん歓迎する。ただ、それだけでなく、更に消費者の立場を考えるなら、同じ消費者である買主への配慮も必要だろう。米国で導入されているMLSやデータ互換されている消費者情報システムなど、積極的に日本でも取り入れるべきだ。

 将来的に、消費者のだれもが不動産に関する様々な情報を瞬時に得られ、それに基づいて正常な取引が行われる、そうした土俵を作ることが、中古流通市場活性化の本格的な隆盛を迎えるための土台となるだろう。