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大言小語 「1年が早い」理由

 今年も重大ニュースをお届けする時季になった。よく、「年をとると1年が早い」と言われる。それは実感しているところだが、問題はその理由だ。もしかしたら、年齢には関係なく、時代・世相の変化かも知れない。

 ▼昔は、正月三箇日はどの商店も休んだので、町に清々しい静寂感が戻ったものだ。憲法記念日など主な祝日にはどの家も国旗を掲げたし、夏のお盆、秋にはお月見など四季折々の行事が、単調になりがちな日々の暮らしに彩りを与えてくれていた。しかし、今はそれがない。

 ▼「同じ1年でも20歳の時は20分の1だが、60歳だと60分の1になるから早く感じる」という説があるそうだが、本当だろうか。この説には、年を重ねると何事にも感動が薄れ記憶として残らないからという、高齢者に対してはかなり失敬な説明も付いている。それで納得してしまう同輩がいるとしたら情けない。

 ▼年をとると1年を短く感じるのは、それだけ人生が充実してきているからである。漫然と日々を過ごしていたら、逆に長く感じるのではないか。まだ、やり残していることがあると感じているからこそ、月日が早く流れてしまうのである。アメリカの心理学者マズローは人間には5段階の欲求があると指摘した。最も高度な欲求が「自己実現」である。日本は世界一の長寿国になった。長くなった人生は、その欲求達成のためにこそ使うべきである。