総合

大言小語 将来不安を拭う役割

 今、世の中を覆っている空気は将来への不安である。豊かに見える社会の足元では格差問題も見え隠れする。高度成長期の花、ニュータウンはさびれたオールドタウンに転落した。商店街が消え、建物も住む人たちも高齢化し傷みが目立つ。子供たちは独立して帰ってこない。空き家が増え、孤独死も出てくる。

 ▼かつて憧れの的だったマンションや団地もいずれ大規模改修による延命か建て替えかの選択を迫られるときが来る。その一つ、多摩ニュータウンには数年前、同時期に建て替えと大規模改修を選択した成功事例がある。前者は諏訪二丁目団地、後者は「エステート鶴牧4.5住宅」である。共に時間を掛けて難しい合意形成を取り付けた。

 ▼建て替えは、保留床を買ってリスクを取るディベロッパーの参画がないと実現できない。敷地売却という選択肢も買い手が出てこなければ成り立たない。大規模改修を選択した団地は、容積率には十分余裕があったものの、駅から徒歩20分の立地が響いて建て替えは難しかった。そこで多くの改修事業者から様々な提案を募って選択し実現させたのだ。

 ▼高齢化や人口減少を悲観的に見がちだが、住宅・不動産業界にとっては新しい事業の種である。市場を全体として拡大させることも可能だ。この事業の推進は同時に、国民が持つ将来不安を解消することにつながる。今後、業界が担う新たな役割となるかもしれない。