政策

社説 空き家問題は住宅政策 隣家への売却に優遇策を

 空き家問題がクローズアップされて久しい。そこでは常に空き家が820万戸存在すると流布されている。しかし、この中には賃貸用429万戸、売却用31万戸などが含まれている。問題となっているのは「その他の住宅」とされている318万戸だ。家がすべて満室という状態はありえない。ことさら数字を大きく見せるのではなく、まずは真実の数字を伝えなければいけない。

空き家の真実

 そのうえで、この問題を解消するために5月下旬、空き家対策特別措置法が施行された。法では、適切な管理が行われていない結果、倒壊など危険の恐れがあることや、衛生上有害となる恐れのある状態などが認められると「特定空き家」に指定され、立ち入り調査や行政代執行による取り壊しができるようにした。

 また、建物が建っていれば固定資産税が6分の1になる優遇策も取り消すことが決まっている。ただし今回の特措法では、難しさもぬぐえない。憲法が保障する私有財産にまで踏み込むのであるから、実際の適用に当たっては議論を呼ぶ場面もあるかもしれない。

 また特措法ができたからといって、自治体任せにするのには、限界がある。

国が予算措置を

 空き家問題は、国の住宅政策である。国家が予算措置を講じなければ、とうてい解消はできない。そのためにも住宅・不動産業界は、国への要望の声を上げなければ、益々空き家が増えていき、地価が著しく減少するなどの経済的損失を被ることにもなる。

 例えば公共施設への利活用にあたっては国から補助金を出してもいいのではないか。更に言えば、隣の家への売却に優遇策を講じたらどうか。一般的には魅力が感じられない場所でも隣家であれば魅力がある場合は多い。いや、むしろ価値がある。誤解を恐れずに言うが、昔から「地続きは女房を質に入れても買え」と言われてきた。それだけ価値があるからである。

 隣家を購入した場合、何らかのインセンティブを与えることで、仲介市場の活性化にもつながる。例えば価格の一部を隣家の購入者であれば割り引く、あるいは税制面で優遇策を与える。隣家が購入した結果、敷地が大きくなり小規模宅地の特例が受けられなくなることもありうるが、その場合には例外として認めればいい。

 離れて暮らしている家族が隣に住むようになれば、好循環も期待できる。買い手がつきそうもない空き家の発生を防止することにも一役果たせるかもしれない。わが国の住まいのあり方を変え、新しい都市計画にチャレンジする好機と捉えるべきである。