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大言小語 どこかで聞いた話

 高度成長時代に東京圏に大量に流入した若者がいっせいに高齢化しているため、近い将来、介護施設の不足が深刻化するという指摘を日本創成会議の下部機関が行った。でも、それって、どこかで聞いた話?

 ▼東京の郊外にある多摩ニュータウンは住民の多くが高齢化したため、エレベーターのない中層建物が問題になっているとか、老朽化したマンションの建て替えが難しい大きな要因は、住民の高齢化がいっせいに進んでいるためとか…。こうした話から学ぶべき共通の教訓があるとすれば――。人は年を取るということを忘れがちであること、日本人はなぜかいっせいに同じ行動を取りやすい民族であるということ。

 ▼勤め帰りに同僚らと連れ立って居酒屋に行くのも年配組日本人は好きだ。そこで、まずはビールで乾杯! お得なセットがあれば、みんなで仲良く注文。ワリカンが前提だから、自分だけ高価な珍味をたのむわけにはいかない。どんなに場が盛り上がっていても、引き上げる時はみんないっせいだ。こうして何年も人と同じ行動、思考パターンを繰り返しているから、ある日突然、行き詰まる。

 ▼それにしても、今後増える一方の高齢者の居場所はどこなのか。人は年を取るものだということを忘れているから、「高齢者とは何か」など考えたこともない。居酒屋は本来、一人静かに暖簾をくぐり、自分の居場所について考える場所である。