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大言小語 地方移住

 各地で地方創生をテーマにしたシンポジウムやセミナーが開かれている。そんな中、消滅可能性都市という衝撃的な問題提起をして関心を集めた日本創成会議が2弾目の提言を発表した。大都市圏で今後もますます増える高齢者人口に対して、都市の医療サービスが追いつかなくなるとの予測を踏まえ、高齢者の地方移住推進を提案しているものだ。

 ▼地方移住は昨今、若年層の間でも静かなブームになりつつある。自然が豊かで人間味あふれる地方で子育てをしたいというニーズはその象徴的なケースと言える。何かとストレスが多い大都市の生活に見切りをつけ、地方に新境地を求める若者も多い。 ▼人生には幾度となく転機が訪れるものだ。出産を妻の実家でするため、週末は地方にある実家へ帰り、月曜朝は始発の新幹線で出社するという生活を送ったことがある。新茶の季節と重なり、山、海、川という自然に囲まれて過ごす週末は、東京で生まれ育った人間にはとても新鮮だった。できればこのまま移住をしたい衝動にも駆られた。

 ▼その前に立ちはだかったのが、仕事の問題だ。果たして地方の小さな町で家族を支えられる仕事が見つかるのかという不安だ。今だから言えるのは、仕事はあった。けれども、自分がしたい仕事がなかっただけに過ぎない。何を主体に考えるかで、地方移住のハードルは高くもなり、また低くもなる。