総合

大言小語 永く続く店

 それほど高いレベルを要求しているつもりはないのに、本当に心落ち着く居酒屋が見つからない。永く通った店でもほんの些細なことがきっかけで足が遠のいてしまう。単なるわがままか、いまだに理想の居酒屋を求めてさまよう日々が続く。そんな気負いをかっこよく感じたのも若いうち。本音をいえば、広漠とした町をあてもなく歩く〝居酒屋難民〟からはもうそろそろ卒業したい。

 ▼居酒屋という〝居場所〟が今ほど求められている時代はないと思う。それなのに、そこに気付く経営者がいない。社会での自分の仕事の役割が分からず、力を出せずにいることはとてもむなしく、もったいない。

 ▼居酒屋は様々な交流を通して地元や地域再生の拠点となる。料理に工夫を凝らし、独自のルートで素材を仕入れることをすれば、日本の農業の再興に一役買うこともできる。常連さんが子供連れできたら、俄か講師となり〝食育塾〟に変身してもいいのではないか。

 ▼いい店には、働くことの躍動感が満ちている。それが、客の心に何かをもたらす。客をもてなす心意気で夫婦の息がピタリと合っている。子供が時々姿を見せる。「あぁ、この子のために頑張っているのか。あの子が大人になるまで、店が繁盛し続けるためには何が必要だろうか」と客は考える。居酒屋は地元で永く続いてこそ意味がある。地域に愛され、地域に尽くす不動産業と似ている。