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社説 整備進む中古市場 投資需要が下支えに

 国土交通省は今、2020年までに中古住宅市場を2010年比で2倍にするという目標をおいて、いろいろな施策を展開している。その成果もあって、首都圏中古マンションの成約件数は11年から13年まで3年連続で増加した。ただ、14年は消費増税の影響などから前年比8%減の約3万4000戸となった。ちなみに、新築マンションの契約戸数が14年は推計で約3万9000戸だから、中古との差は5000戸ほどしかない。近年中にも、中古が新築を上回る可能性がある。

資産価値維持が第一

 中古市場活性化の意義はいろいろあるが、最も重要なのは住宅の資産価値を維持することである。日本は個人資産の大半が住宅だからである。しかも、世界一の長寿化で、これからはリタイア後の人生が長い。自宅の資産価値を維持することができれば、老後の家計を支える大きな力となる。

 しかし、現状は首都圏のマンションでも1年で約100万円、10年経つと1000万円値下がりしてしまのが平均的な実態である。ローンの元本が減るスピード以上に価値(売却可能価格)が下がってしまうケースもあり、その場合は売るに売れない。ただ、ここにきて都内では中古マンション相場が13年から上昇し始めている。

人口減少下でも可能か

 背景には相続税対策のための富裕層による投資需要などもあるようだ。しかし、既存住宅瑕疵保険の整備など国交省や業界の努力により、中古でも安心して購入できる環境が整いつつあることも大きく寄与しているのではないか。

 もちろん、それでも懸念はある。高齢化と人口減が進む日本では、たとえ中古市場を活性化したとしても、自宅の資産価値維持には追いつかないのではないか。空き家が増え続けていることも気になる。絶対的なストック過剰状態が解消されない限り、中古住宅の価格は下がり続けるのではないか。

 では、どうすればいいのか。一般的な住宅の資産価値下落が避けられないとすれば、個人は他の方法で資産防衛を図るしかない。その手段の一つが不動産投資である。近年は、個人の不動産投資家が増えている。中古マンションや中古戸建て市場に投資需要が向かえば、その分は実需に上乗せされるから、市場活性化に貢献するし、収益還元法による投資という意味で価格の下支え効果もある。

 現に、木造一戸建て住宅の場合、築年数が20年を超えると実需では土地価格だけとなってしまうが、投資用としては期待利回りから算出した収益還元価格での取引が可能となる。同様の理屈は中古マンションでも通用するはずである。つまり、個人の不動産投資が増大すれば、一般的な中古住宅市場の活性化と資産価値の維持に貢献することになる。