政策

社説 相続増税と空き家 自宅賃貸でも特例認めよ

 今年から増税された相続税が、全国で問題になっている空き家を増やす誘因になりそうだ。顕著なケースが、被相続人が特養など老人ホームに入居していた場合の小規模宅地の特例の扱いだ。

空き家が条件の特例

 相続税は、今年1月から基礎控除が40%減となるなど大幅に引き上げられた。この結果、全国の課税対象者は従来のおよそ2倍になると予想されている。

 一方で、不動産の評価を80%減にする小規模宅地等の特例は、適用面積が240m2から330m2へと拡大された。ただし問題がある。

 被相続人が老人ホームに入居していた場合、元々住んでいた自宅を貸したり、事業の用に供していないことが、小規模宅地の80%減特例を受けられる条件になっている。

 従来から老人ホームに入居した場合の特例の扱いについては、入居後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないことが要件だった。

 今回これを入居後あらたに事業の用や被相続人または同一生計親族以外の者の居住の用に供していないことが要件になっている。字句こそ変わったものの内容は変わらない。つまり老人ホームに入居して、元の自宅を賃貸に出したりしていたら80%減の特例を受けられないという内容である。

 また、老人ホームに入居する際、自宅を処分することはあまりなく、いずれ帰宅することもあるだろうと自宅はそのままにしておくケースも多い。

 そのため、老人ホームに入居して主のいなくなった住まいは、何年も空き家のままになってしまいかねない。

 政府は増え続ける空き家問題に対処するため、放置され危険性が指摘される空き家の固定資産税優遇措置を取りやめるなどの法律改正を行った。

 地方税である固定資産税の法改正を行いながら、一方では国税である相続税にあっては空き家発生を誘因していないだろうか。

子など入居も小規模扱いに

 空き家を発生させないためにも、老人ホームに入居後であっても、子や孫世帯が同じ敷地内に住んだ場合、小規模宅地の特例を適用できるようにするだけでなく、固定資産税を減免するなどして、老人ホーム入居後の救済と空き家を増やさない対策としてはどうか。

 子や孫が住めないのであれば、地元自治体が借り上げ、そのまま賃貸住宅とし、子供がいる世帯を優先的に入居させてもいいではないか。

 この場合も特例の適用対象にすれば、空き家にしないで有効活用が進む。こうした手立てを講じなければ、高齢者は不安で老人ホームにも入れない。