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大言小語 震災から学ぶこと

 1月17日に開かれた阪神・淡路大震災20年追悼式典。屋外会場のHAT神戸は、午前11時45分の式典開始直後まで青空に恵まれていたが、会が進むにつれ雲が生じ、ついに雨粒が落ちてきた。クライマックスの「献花」の頃は本降りに。被害者たちの涙を思わせる雨。感謝の涙か、それとも痛恨の涙か。そして、式典終了の午後1時頃には再び上空に青空。参加者は、そして遺族は、この天気の移り変わりをどう思ったか。

 ▼遺族代表であいさつした小河昌江さんは言った。「その後の人生を歩めたのは、彼らのお陰」と。彼らとは、家の下敷きになって助かる見込みのない母を懸命に救助し、渋滞の中病院まで運んでくれた人たち。「その後の人生、母に何もできなかったという自責の念に苛まれることがなかった」。知らない人同士でさえ、このような助け合いがあった。

 ▼日々の生活に追われ、忘れがちになる人としての大切な気持ち。時として、〝非日常〟がそれを思い起こさせてくれる。毎年迎える「1.17」や「3.11」は、ほんの少し日常の歩みを緩め、様々な思いを巡らせる一日にしたい。

 ▼取材を終え帰路に着いた新幹線の車内。大きく重そうな荷物を持つ女性が横に立った。「上の棚に乗せてあげますよ」。いつもはなかなか出ない言葉が、驚くほどこの日は自然と出た。このようなことも「震災から学ぶこと」の一つだと思う。