政策

社説 新年、住宅・不動産業界の課題 まず住宅需要の回復策を

 衆院総選挙で自民、公明連立与党が3分の2の議席を確保したのを受け、12月24日、第3次安倍内閣がスタートした。安倍首相は、この難局を「経済重視」で臨む方針を打ち出した。柱はアベノミクスの推進だが、中でも3本目の矢、成長戦略を具体的に打ち出し、推進することが喫緊の課題である。

社会インフラを整備

 アベノミクス発動から2年。その効果をまだ実感できない国民が数多く存在する中で、消費税増税で落ち込んだ経済はまさに回復への正念場にある。消費税10%への再増税まで時間的余裕はない。回復軌道をどう確かなものにすることができるか。とりわけ国民生活に密接で、経済波及効果や地域活性化にもつながる内需の柱、住宅や都市開発、街づくり分野に力を入れるよう強く要望したい。少子高齢化が進み、人口減少社会に突入した我が国だが、余力のあるうちに財政再建への道筋を付け、住宅や都市基盤、環境対策などの社会インフラを整備・更新して備えることが重要だ。

 住宅新報社が選んだ14年重大ニュースで業界に最も影響を与えた出来事は、やはり「消費税増税」だった。注文住宅の販売は駆け込み需要の反動減が響き、前年比で二桁台の落ち込みが続いた。それは新設住宅着工でも明らかで、想定以上の厳しい結果となった。影響が小さいとみられていた分譲マンションも減速し、首都圏市場では新規供給が約25%も落ち込んだ。富裕層や投資家が関心を示す都心部や湾岸エリアのタワーマンションなどは好調だったが、郊外の実需層向け物件が低迷した。

 消費税増税が勤労者世帯の家計を圧迫したうえ、マンションもコスト高で価格が上昇傾向にあり、需要層の購買力が低下したことが大きい。結果的にしばらく様子を見るスタンスに転換した人が増えたと思われるが、「あきらめる」にならないよう住宅購入の環境を整えていくことが肝要だ。国民の住宅に対する希求は根強い。税制を含めた支援策や購買力を向上させる政策が不可欠である。

資質向上への期待

 一方、業界の明るい話題では、宅地建物取引業法の改正による「宅地建物取引主任者の宅地建物取引士への名称変更」がある。4月に改正業法が施行され、晴れて「宅建士」が誕生する。各業界団体には自主的な「指導監督体制」と「倫理規程」が盛り込まれた。資質向上へ向け、不動産業界は新たな局面を迎えるわけだが、法的整備だけでなく、「士」を名乗る以上、自らを強く律する姿勢が求められてくる。

 次に、都内各地で大型再開発プロジェクトが相次いだ。15年も幾つも新しい事業が動き出す。魅力ある国際都市づくりへの取り組みだが、同時に日本、東京の復活への挑戦でもある。目に見える形で成長を実感できる、明るい材料として大いに期待したい。