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社説 住宅取得者への政策支援 今こそ「起爆剤」が必要

 やはり、というべきか。工業市場研究所が10月中旬にマンション購入検討者に対して実施した調査によると、消費税率が10%に引き上げられた際、購入計画に「影響する」と答えた割合は7割以上にも上った。4月の5%から8%への増税の際は、それが6割弱だったことを考えると、やはり10%増税のインパクトは強いようだ。

 影響の内容としては、「増税前の駆け込み」のほか、購入時期の先送り、価格の見直し、そして「購入計画そのものの見直し」という回答も目立った。建築費やマンション用地価格の「ダブル上昇」と共に訪れる更なる税率アップ。所得環境の改善が一般所得者層にまで行き渡っていない現状下では、消費税率を仮に10%へと引き上げるならば、住宅取得に対しては何らかの特例措置を講ずることが必要だ。

 業界は「軽減税率の導入」を声高に叫んでいる。増税により、国民の住宅取得機会が減ってしまうことを考えれば当然のことだ。国民も何らかの軽減措置を望んでいる。一方的な増税だけでは、政府が思い描く「財源不足の補てん」は難しいだろう。増税の分だけ需要が落ち込むのは当然のことで、様々な波及効果を期待できる住宅市場が増税により縮小すれば、税収にも大きな影響が出ると予想できる。また、安倍政権の「一丁目一番地」である経済活性化にも間違いなく影響が出るだろう。政府には単なる税収増といった考えではなく、より大局に立った視点での判断をお願いしたい。

 年末に向けた15年度税制改正の議論では、「住宅取得資金にかかる贈与税の非課税枠拡大」も業界にとっては大きな論点となる。国土交通省は今年度で終了する適用期間の延長と共に、現状「500万円」の枠を「最大3000万円」にするよう大幅拡充を求めている。5%から8%への消費増税の反動減が数字上でも表面化している今こそ、求められるのはこれまでにない大胆な「起爆剤」だ。

適齢層を取り巻く環境

 少子高齢化、上がらぬ給料、先行きの見えない社会情勢。今の住宅取得適齢層は、将来に対して大きな不安を抱えている。これまでの「普通」が、ゆくゆくは期待できなくなることも覚悟している。足りない社会保障費を負担したとしても、それが自身の年金にフィードバックされるかどうかも分からない。そんな状況だからこそ、住まいに関しては安心・安全を求める。何があっても雨風をしのげる住まいを、今のうちに確保しようと考える。

 社会保障サービス維持のためには、消費増税もやむを得ない選択の一つだろう。ただ、政府は彼らの住宅に対するそのような気持ちを十分に汲んだ上で、政策決定しなければならない。