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大言小語 においだけでは分からぬもの

 今年の夏の猛暑も、意外と短い期間で終わり、彼岸前には少し過ごしやすい気候になった。街の木々の緑は色づいているとは言えないが、小子が出勤に通っている桜田通りのイチョウ並木は早くも銀杏を落とし始め、なんとも言えない匂いを漂わせている。

 ▼その匂いで、子供の頃は敬遠していたが、今ではすっかり酒の友となってしまった。皮のついたまま煎って、熱い殻をむくと翡翠色の美しい正体が現れる。塩を振って食べるとこれは最高だ。串焼きにしてもいいし、油で揚げてもいい。茶碗蒸しに入っていると、これもまたいい。つい酒が欲しくなる。困ったやつだ。

 ▼こんなにおいしい銀杏、匂いもそうだが、実を水に漬けて果肉を腐らせてから出すなど、食べるまでの苦労が大変。おいしいところを獣から守っているのか。一見、クサイ、怪しいけれど、付き合ってみると実に性格がいい人のよう。何事も表面付き合いだけでは分からない。

 ▼最近は、お友達だけを重用し、自分と肌が合わない人を登用しない、というリーダーが多いが、それでは、実の詰まった活動はできないだろう。その意味で、安倍自民党総裁が幹事長に谷垣氏を充てた人事には注目だ。思想信条など必ずしも合うとは思えない谷垣氏とどう政策を進めていくか。〝生臭い〟消費増税人事ではないことを望む。