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大言小語 ストック活用の契機

 改正建築基準法が成立し、マンションなどのエレベーター部分が容積率に算入されないことになった。建物の老朽化でリフォームや建て替えを考えている管理組合などにとっては朗報である。施行は「早く施行しないと待つ人が出てくる」との配慮で7月1日となった。進行中の協議が沈滞することなく、すぐにも具体化できる素速い対応である。

 ▼4~5階建てでエレベーターの付いていない建物は80年代まで数多くつくられてきた。分譲、賃貸を問わず団地型の住棟配置で、階段室から左右振り分けの独立性の高い住宅である。30代、40代の元気な頃に入居して数十年、60代ともなると階段の昇り降りは大きな負担となる。そうした建物は、階段室脇にエレベーターを取り付ければ立派なバリアフリー住宅に変身する。

 ▼エレベーター部分が容積率に不算入となったことで、現状で容積率がオーバーしている「既存不適格物件」の建て替えにもほのかな光明が差してきそうだ。エレベーター部分の容積が全容積率の数%とすると、その分だけ住戸数を増やすことができる。不適格状況にもよるが、一度止まって諦めかけた建物再建の可能性が広がる。

 ▼エレベーターのない集合住宅でも1階に高齢者、2階から上は元気な子育て世代と、住み分ける考え方がある。今回の法改正が、これまで進まなかったストック活用がハード・ソフト両面から改めて見直される契機になればと思う。