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大言小語 「お通し」がない店

 「お通し」を出さない居酒屋を久しぶりに見つけた。注文した料理を出すまでに時間が掛かることもあるので、それまでのつなぎが「お通し」だ。従って小さな小鉢ものだし、料金は取ってもわずかというのが常識。しかし、最近は他の料理とさして変わらない代金を取っている、と推察できる店が案外多い。

 ▼「当店では、お通し代として○○円いただきます」と堂々と書いてある店もある。その金額には驚かされたことがある。こうなると、明らかに店の収益を支える(何しろ、入ってきた客はもれなく払うのだから)商品となるが、注文していないのに勝手に出す根拠はどこにあるのかと思ってしまう。外国人にはなおさら理解できないのではないか。なんとなく、住宅を借りる時の礼金や更新料などと、徴収根拠が不透明という点が似ていないだろうか。

 ▼その店は小さいが焼き鳥が看板。注文を聞いてから肉をさばいて串に刺す。炭火でゆっくり焼くから、とてもおいしいが時間はかかる。本来なら、お通しがあっても不思議はない。

 ▼客に始終気を使う主人で「不明朗なお代は一切いただかない」という気っ風の良さが伝わってくるようだ。焼き鳥と家賃では桁が違うが、サービス業に欠かせないのは「客に、嫌な思いは絶対させたくない」という商売人としての心意気ではないだろうか。