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大言小語 「すいません」のない居酒屋に

 居酒屋では、オーダーの時、客が「すいません」を連発する。謝るのなら、本当は「すみません」なのだが、それはさておき、なぜ客の方が謝らなければならないのか。

 ▼居酒屋での「すいません」は、謝っているわけではなく、店員を呼び止めるのに、ほかに適当な言葉がないからだろうとは思う。しかし、人に呼び掛ける時の「すみません」は、道を尋ねる時のように「あのう、すみませんが…」と使ってこそ生きてくる。その日本的な美しい言葉を、まるで呼び出しブザーを押すかのごとく乱発されると、なぜか気分が滅入ってしまう。

 ▼業界では、「安心・安全」がキーワードになっている。家を買う時の様々な不安をどう解消するかが、新築も中古も焦点になっている。阪神・淡路、東日本と巨大地震が続いたため、地震に対する不安が今でも強い。しかし、不安を完璧に解消することはできない。〝想定外〟こそ、時代的リスクだからだ。やはり、家族が幸福になるための住まいを研究することこそ、業界の最大の責務である。

 ▼本末転倒は気分が落ち着かない。〝癒やし〟の場であるべき居酒屋が、そうであってはならない。酒場の主役はやはり客であり、店はもてなす方である。ブザーではない、客に「すいません」と言わせない工夫をすれば、大繁盛間違いなしと思うのだが、そんな簡単なことにも気付かない店は結構多い。