政策

社説 賃貸住宅管理業者登録制度 目先の利益を追うだけでは

 12月で丸2年が経過した「賃貸住宅管理業者登録制度」。「業」としての位置付けがなかなか進まなかった「賃貸管理」という分野に、大きなスポットライトを照らす意義ある制度といえるが、現時点の登録者数は3100社強。対象が数万社に上ることを考えると、任意であるとはいえ決して多い数ではない。

 賃貸管理業は、それに関する法制度や明確なルールがなく、それぞれの事業者のある程度の裁量で行われているのが現状だ。その業務に関して一定のルールを設けることで、貸主(オーナー)と借主の利益を保護することが同制度の主眼。それと同時に、賃貸管理を営む事業者にとっても大きな利益につながる制度だと言える。ルールとして定められた業務を、忠実にしっかりと実践している事業者として、社会に堂々とアピールできるからだ。

厳しさを増す市場

 しかし、「貸主、借主が制度のことを知らないため、登録するメリットを感じない。もう少し様子を見る」と話す管理業者が非常に多い。確かに、制度のPR不足は否めない。また、事務量だけが増え、見返りが何も期待できないとなれば、「様子見」を決め込むことも理解できる。ただ、そのような消極的な考えでこれからの賃貸市場を乗り切っていけるのか、少々心配になる。

 今後、今まで経験したことのない厳しい市場になることは誰もが予想していることだ。優勝劣敗も明確化するだろう。そのような状況にありながら、目先のメリットだけを考えた経営方針で、ライバルに打ち勝てると本当に考えているのだろうか。現時点ではそれほどのメリットを感じないながらも、積極的に制度に登録し、努力している企業が3100社は既に存在していることに注意を向けるべきであろう。

法制化に向けた動き

 全国賃貸不動産管理業協会と日本賃貸住宅管理協会の業界2団体は、賃貸管理業の「法制化」へ向けた取り組みを活発化させている。法制化の意味するところは、「賃貸管理業の『業(ビジネス)』としての確立」。業として法律でしっかりと位置付け、更に、その法律のもとで培った貸主との信頼関係を基に、次なる事業を手掛けるというチャンスも生まれる。賃貸管理業者に、ビジネス上の大きな可能性を与えるものだ。

 法制化実現のためには、丸2年を迎えたこの登録制度の普及状況がカギとなる。今後も普及が進まないとなれば、より高度な対応が求められる法制化は難しいと判断されるだろう。認知度不足、メリットの不在など、登録制度に対して言いたいことは色々あると思う。ただ、自身が今手掛けている賃貸管理業の将来を真剣に考えれば、今だけに囚われない長期的視野こそ必要なのではないだろうか。