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大言小語 消えゆく居酒屋文化

 40年もやっている馴染みの居酒屋は、常連客といえば団塊世代か、その上の世代だ。ある店の主人は「昔は上司が若い部下を連れて来て、その若いのが常連になってくれたが、今はそういうこともなくなった」と嘆く。これは、逆三角形になってしまった人口ピラミッドの弊害か。いやいや、そのようなマクロの話ではないだろう。古い居酒屋で、若者の姿を見かけなくなってきた最大の要因は、会社の先輩と新人が呑みに行く文化そのものの衰退ではないか。

 ▼若者は誰と話したがっているのだろうか。会社での世代間断絶の前には、家庭での親子の断絶があった。人は所詮繋がりあえないものという諦めが常識化していたとき、東日本大震災が起こった。 ▼一気に〝絆〟が社会のキーワードとなり、2世帯住宅が増えたり、若者同士が一つ屋根の下に暮らすシェアハウスなどが一段と注目されるようになった。しかし、社会の本質が、何か変わったのだろうか。単身世帯数は2030年までは確実に増えていくという。

 ▼一人暮らしで注目されるのは高齢者だが、若者が暮らす住まいの質や環境も、社会の大事なインフラとなる。悩みや心の不安を共有できるコミュニティが必要だ。

不安がまったくない人生などあり得ないが、職場での世代間断絶を埋め合わす同世代感の交流は必要だろう。異なる企業のシェアハウス型社員寮がブームとなっている理由が分かる気がする。