政策

社説 「空き家問題」を考える 保有税の創設も視野に

 5年に1回の住宅・土地統計調査が、現在行われている。わが国の住宅の数・世帯数などの実態が分かる唯一のもので関心が高い。なかでも気になるのは、空き家の状況がどうなっているかである。

 5年前の調査結果でも、空き家は799万戸あった。中でも特に問題なのが、長期的に不在になっている「その他空家」の268万戸だ。今回の調査では、人口減少に伴う少子高齢化などの背景から、更に増えていることが予想される。空き家は、防災・防犯面で大きな問題である。ゴミが放置され周辺に迷惑をもたらすケースも多い。

自民党が対策法案

 そこで自民党は、今国会に空き家対策法案を議員立法で提出する準備をしている。骨子は、市町村に家屋への立ち入り調査権を認め、拒否した場合は罰則も設ける。また空き家を自主的に撤去した場合は、固定資産税を軽減しようというのが柱になっている。

 行政による立ち入り調査権は、この際必要だが、税の軽減はどうであろう。そもそも空き家として放置される要因は、それを撤去するだけの資力がないことがあるほか、所有者が高齢者でままならないことも多い。

 何より放置の最大の要因は、空き家になっていても居住用建物の敷地になっていれば固定資産税が最大6分の1に軽減されていることだ。そのため、所有者はわざわざ出費をして取り壊し、税金が上がるようにする行動は取りたがらない。だから取り壊せば軽減しようというのが法案になっているのだが、効果としては逆ではないか。軽減幅にもよるが、アメを与れば何らかの行動を促すインセンティブになるだろうか。

 むしろ、賃貸用でもなく長期にわたって使われてないなど一定の基準に沿って「空き家」と認定したものについては、この軽減措置をなくしてはどうか。それでも何ら対策を取らない所有者には、課税が強化される空き家保有税を創設してもいい。

求められる民の知恵

 所有者を捕捉できない場合も、行政側は手を尽くして特定しなければいけない。そうでなければ課税の公平が保てない。

 そのうえで期間を限り課税強化をする旨の公告を、さまざまな媒体を使ってでも周知すべきである。

 ただし空き家のまま放置される要因のひとつには、市場価値が低いケースが多いことがあげられる。地方自治体の一部には、すでに買い上げる措置をとっているところもあるが、こうした政策には、おのずと限界がある。民間とりわけ不動産会社には、プロとしての社会的使命を担う観点から、空き家利活用の知恵が求められる。