政策

社説 業績回復基調の住宅・不動産決算 景気期待、消費増税の反動に備えよう

 金融緩和に財政出動、更に成長戦略。アベノミクスの3本の矢が6月出そろうが、安倍内閣誕生以来の景気回復期待感に水を差すように5月23日、日経平均株価は1100円も暴落、関係者を震撼させた。国内では00年のITバブル崩壊、08年のリーマンショック以来の大幅な下げで、円安も株高も一筋縄ではいかないことを改めて指し示した。一喜一憂する必要はないが、景気回復に過大な期待感を抱くのは改めた方がよい。

 バブル崩壊から20年。この間、住宅・不動産業界は決して安穏と過ごしたわけではない。止めどない資産デフレと闘いながら、業績を立て直してきたのである。最近では、世界同時金融不況と言われたリーマンショックの余波で、数多くの上場企業が相次いで倒産するという苦い経験も積んだ。その前のミニバブルと言われた外資を含めた不動産投資ブームが結果的には災いとなったのである。

 そして不況期と景気浮揚期待感を背負った13年3月期決算。住宅・不動産企業は根強い住宅需要を背景に増収増益基調を強め、業績を底入れから拡大傾向に転換させていることが明らかになった。売り上げ計上に時間のかかる住宅・不動産にとって、世間でいうアベノミクス効果は、株式評価損などの特別損失が減少したこと以外、ほとんど含まれていない。株高で資産効果の出た富裕層の高級物件購入の動きが業績に反映されるのはこれからだし、一般勤労者世帯に所得の伸びが反映されるかはまだ未定だ。

 今回の業績回復基調の背景には根強い住宅需要、とりわけ消費税増税を控えた動きがありそうだ。マンション、住宅メーカーでは契約・受注が大きく伸びている。そして、オフィスビル市況が賃料、空室率とも底入れ、上昇の機運を示していること、更に不動産流通市場の堅調さ、リフォーム市場が活発化の兆しを見せていることも各社の業績から読みとれる。

 このように、アベノミクス効果は今後の業績のプラス要因ではあるが、それ以上に影響を与えそうなのが消費税増税だ。9月30日までに請負契約を結べば、引き渡しが来年4月以降になっても現行の5%が適用される経過措置期間の営業が今真っ最中だが、既に関心はそれ以降の反動減対策に移っているとも言われる。

 住宅ローン減税の拡充と負担増加分の給付措置などこの夏に固まる課題も残されているが、2段階で引き上げられる消費税対策は何よりも最優先事項だ。89年の導入時、97年の5%引き上げ時に続く3度目の試練を迎える。これまでは駆け込み需要の発生とその反動減で業界は塗炭の苦しみを味わった。駆け込みは需要の先食いである。

 安倍政権に対する期待感の高まりと、佳境に入った消費税増税を睨んだ需要者の動き。ともに大きなうねりではあるが、これまでの経験を生かしたい。その反動への備えは必要だが、資産デフレを克服してきた企業にとって対応できないはずはない。強くなった企業像を見せてもらいたい。