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大言小語 木の居酒屋

 昼食を食べるため、飯田橋駅近くの居酒屋に入って驚いた。内装がすべて木材。テーブルは厚さ10センチもあろうかという欅の一枚板。椅子は杉材で座り心地がいい。「今度は、夜来よう」と固く誓った。やはり木は落ち着く。なぜ、日本人は木の魅力をもっと活用しないのか。

 ▼「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が10年10月に施行された。国や地方公共団体に、自ら率先して公共建築物の木材利用を促進するよう求めている。日本は国土の7割が森林なのだから、これまで外材に頼ってきた供給を国産材に徐々にシフトして、林業を成長産業に育てていく努力をすべきである。 ▼庁舎などの建て替えの際は木造にすることを義務付けてもいいのではないか。そもそも、戦国時代の城は木造高層建築物だった。アベノミクスの成長戦略が近くまとまるが、江戸城を木造で再建するなど、日本人の心に響くサプライズを期待したい。

 ▼木に囲まれていると心が落ち着くので、人は優しくなる。そういえば、前出の居酒屋にいた女性の店員は美しく、優しかった。昔、家族旅行でログハウスに泊まったとき、娘が初めて「お父さん、肩でも揉もうか」と言ってくれたことを今でも思い出す。

 ▼木造の建物が公共建築物から民間にも広がり、日本の街並みに木のぬくもりが加わるようになれば、他人のことを思いやる優しい日本人が復活するのではないか。