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大言小語 イクメンが出世する

 〝イクメン〟の名付け親で、東レ経営研究所主席コンサルタントの渥美由喜氏は言う。「これからはイクメンでなければ女性にモテないし、出世もできない」と。出世を助けるという見方が新鮮だ。理由は子育てや家事をこなすことで身につくタイムマネジメント力、子供の気持ちを思いやることが部下を育成する力にもなるという。

 ▼少子化を食い止めるには、夫婦が協力して仕事と家事・育児の両立を図っていくしかない。そして大切な点はそうした努力を楽しむことができるかだ。子供を育てることは、人間が為す最も崇高な仕事だと思うが、日本の男性はそこに気づいていなかったのだろうか。

 ▼昔、日本が高度成長路線を驀進し米国に輸出攻勢をかけていたとき、「日本はアンフェアだ。日本の男性は会社での責任しか果たさず、家庭における夫や父親としての責任、地域社会での責務も果たしていない」と批判された。だが、仕事人間だった彼らは、その報いを今受けている。「妻の愛情は、リタイア後も低迷したまま」(渥美氏)なのだそうだ。

 ▼会社も今後は大きく変わる。育児休業を請求する男性社員を、宇宙人を見るごとく扱うようではグローバル社会では生き残れない。「これからの日本は、もはや成長よりも成熟という新しい価値を創造すべき」と指摘するのは、榊原英資・青山学院大学教授だ。イクメンこそ、真の豊かさに目覚めているのかも知れない。