総合

大言小語 寄り添う気持ち

 大和ハウス工業の樋口武男会長は「どうすれば儲かるかではなく、世の中が求めているものは何かを考え、満足してもらえる商品やサービスを提供していけば企業は成長できる」と話す。

 ▼国土交通省は今年、中古住宅市場活性化のための12の先導的モデル事業を採択した。来年度も支援体制を継続する方針。

流通市場を担う中小宅建業者にとっては、新たなビジネスモデルを確立する絶好のチャンスだ。中古住宅の取引が安心して行えるようになれば、ライフスタイルに合わせ、もっと気軽に家を買い替える文化が日本でも根付く可能性がある。

 ▼そこで、樋口会長の言葉が参考になる。仲介報酬を増やしたいとか、インスペクションが普及すれば報酬源が増えるのではないかという発想は禁物だ。あくまでも、中古住宅の買主や売主が求めていることは何か、なぜそうなのかというニーズの本質を見極めるのが先決だ。

 ▼例えば、買い主はインスペクションは必要だと思っていても、とりあえず売買契約を結び、その後に実施してみて、万一瑕疵が見つかったら契約を解除できる定めにしておけば十分と思うかも知れない。取引は円滑に進めたいというのがユーザー心理だ。

 ▼他者の気持ちや立場にどこまで寄り添うことができるか。それは営業の世界に留まらない、現代社会が人に求めている切実な規範かも知れない。