政策

社説 始まった流通活性化の講習会 仲間と連携し、変革目指せ

 国土交通省が主催する「不動産流通市場活性化のための講習会」の全国キャラバンが始まった。全国に700万戸以上の空き家があるなどストック過剰時代を迎え、既存住宅の流通促進が喫緊の課題との認識を踏まえたものだ。

 今年度、全国で12の「不動産流通に関する事業者間の連携を支援する仕組み」(協議会)が同省によって採択されていて、講習会はその協議会によるビジネスモデルを発表する場ともなっている。

 第1弾は先週、東京と高松で開かれたが、両会場ともに多くの不動産業者らが参加し、新時代到来を予感させる講演内容に熱心に聞き入った。今回の講習会が従来になく、業界の関心を集めている要因はいくつかある。

 その一つは、国交省の熱意が伝わってきていることである。「不動産流通市場活性化フォーラム」の座長を務めた日本大学の中川雅之・経済学部教授も、「不動産業課と住宅政策課という局が違う課が連携していることでも本気であることが分かる」という。

 東京では野村正史不動産業課長と福島直樹住宅政策課長が、高松では小林正典不動産業政策調整官が講演し、若年世代の年収が低下し持家率も既婚率も下がっているなど住宅政策的な課題を解決するためには、不動産流通システムの変革が不可欠であると強調した。

 活性化フォーラムは今年6月、流通システム改革のための課題として「情報整備」など5つの柱を提言。その中の一つが「先進的な不動産流通ビジネスモデルの育成と支援」である。7月に19件の応募の中から選ばれた全国12協議会の取り組みがその具体例となる。

不動産業の盛衰掛かる

 議論は始まったばかりだが、12協議会が取り組むプロジェクトの成否こそ、我が国の中小不動産業界の盛衰が掛かっている。最大のキーワードは「連携」だ。小林正典調整官は講演で、「従来の不動産業はスクラップ&ビルドを繰り返す物件主体の業務だったが、今後は物件の再生や相続、資産価値の維持・向上などコンサルティングが主体となる。そうしたニーズに対応していくためには、事業者間の連携が欠かせない」と話す。

 不動産仲介業は今、本当に大きな変革期を迎えていると思う。首都圏既存住宅流通推進協議会の代表である西生建氏はこう指摘する。「家が余り、しかも人口が減少していく住宅市場を初めて迎えているという認識がまだまだ弱い」

 面倒なことや苦難が予想されると、人はそれから逃げようとする。あるいは気付いても気付いていないふりをする。大きな変革期にそうした態度を続けていれば、企業としては孤立するだけだ。今こそ、協議会という場に参加し、仲間と共に変革への一歩を踏み出すべきではないか。