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大言小語 高齢社会と飲食店

 秋の味覚を求めて、東京の繁華街を歩くと気になるのが飲食店の客引きだ。居酒屋チェーンに、独立系店舗も負けまいと声をかけてくる。中には食い下がってくる猛者もいる。時間帯によっては、通行人の数より多い。なぜこうなったかといえば、経営の厳しさだ。長引く不況で生活防衛に走り客が育たないのだ。

 ▼独立系飲食店が立ち並ぶ新橋の一角では、数年前から全般的に客足が減り始め、近所の店を覗いたり、愚痴を言い合うのが当たり前の光景になった。繁閑の波はあるが、どこも暇で経営は楽ではない。女将の年齢も50代から70代へと高齢化も進む。「あと何年持つかね」という客の方も高齢化していく。

 ▼交際費を使う社用族が来なくなって自腹客は大歓迎だが、店にとっては痛い。常連客も年収が下がり小遣いが減らされる一方だから、来店回数も以前のようにはいかない。若者は堅実で酒を飲まないから期待はできない|。女将の悩みは尽きないが、1つの光明はOB同級会である。

 ▼60代半ば以上の元気な人たちが気心の知れた大学やかつての職場の同級生と定期的に集まり、「おい、お前」と共通の話題に花を咲かせるのである。年金暮らしにとっては、都心で旧交を温めるいい機会でもある。いつまで集まることができるか。足元のおぼつかない光明だが、立派な飲食ビジネス。気分良く飲ませて、店のため、経済のため、大いに奮闘してもらいたい。