政策

社説 住まいの本質論 暮らし方を文化にすることがエコ

 住まいの本質は何か。生命の安全、子育て、安らぎの時間、労働力の再生産、家族や地域とのコミュニケーションなどが基本的機能と言われる。

 近年、地球環境問題を背景に住宅の長寿命化が叫ばれるようになったが、偶然か時宜にかなったものと言えよう。住まいも住み手も地域に根ざしてこそ、家族という社会単位が成熟社会の支柱になり得るからである。

エネルギー不足は本当か

 90年代初頭のバブル(土地神話)崩壊までは、住宅は資産としての意味合いが強かった。土地の値上がりによって、建物が老朽化しても資産価値(流通価格)は上昇したからだ。その後、日本は「失われた20数年」という閉そく感漂う社会環境の中にある。

 そうした倦怠感の中、震災による原発事故で、人々の関心はエネルギー問題に大きく傾くことになる。住宅で消費されるエネルギーが問題となり、再生可能エネルギーの導入や、IT技術を使ってエネルギー消費をコントロールする住宅の「スマート化」があたかも住まいの本質にも及ぶかのような潮流になり始めている。

 確かに、スマート住宅が普及し、それにより家庭でのエネルギー消費が現実に減少し、地球環境に貢献したということになるのであれば、住宅を社会資産と見る土壌が醸成され、長寿命化による住宅の社会資産化にも弾みがつくのかも知れない。

 しかし、エネルギー不足は本当なのか。エネルギー問題はややこしい。省エネ機器を製造する過程で使ったエネルギーや、今後は人口減少による需要減退分などもカウントしなければならない。

 所詮、数値による把握が困難であるなら、住宅の作り方や、そこでの暮らし方、住まいとは何かをもっと深く知る姿勢の中にこそ「エコ」があるように思える。

DIYの思想を

 例えば、住宅建材に地元の県産材を使えば長寿化や地産地消による運送エネルギーの削減が実現する。中古住宅市場活性化の切り札と言われるリフォーム市場も、DIY(ユーザーが自ら手を入れる)文化と共に育成していけば、住宅知識の習得が進み、長寿命化を加速する。

 リフォームを全て業者まかせとするのでは、ユーザーが住宅ストック時代の主役にはなり得ない。現在の新築市場となんら変わらないだろう。今は、日本の住文化の在り方を改めて問い直すときである。