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いまこそ前を向いて進もう ~輝く確かな未来へのメッセージ 最終回 特別版 地域政策 東京都板橋区長・坂本健氏と語る (株)リブラン会長・鈴木静雄氏

 「いまこそ前を向いて進もう」企画第2部も今回が最終回。「安心・安全」をマニフェストに掲げ、まちづくりを進める東京都板橋区の坂本健区長と、同区に本拠を置く、環境、子育て、コミュニティ対応マンションなどを展開する中堅ディベロッパー、リブラン会長の鈴木静雄氏。テーマは、「社会問題解決に必要なのは良質な居住環境~居住福祉の観点からまちと住宅を再構築する」。東日本大震災を踏まえた震災・防災対策から、高齢化、人口減少社会に対応した地域のあり方や活性化策などを探ります。

社会問題の解決は居住福祉の発想から安心・安全な街づくりをどう進めるか

――東日本大震災を踏まえ、安心・安全な街と住まいづくりをどう進めるか。

坂本区長 07(平成19)年に区長に就任以来、マニュフェストに掲げた3本柱の一つ「安心・安全」の強化に取り組んできた。特に学校の耐震化は、3.11以前の中国・四川大地震を教訓に、計画を大幅に前倒しし、大規模改築や耐震工事により、すべての児童・生徒の安全確保に努めてきた。

しかし、区民の生命を守るためには住宅の耐震性確保が急務。診断や改修を助成する木造耐震化推進のための予算も昨年6月に増額した。昨年度の耐震診断は110件、工事は12件助成した。まだまだ少ないが、診断は前年度比で84件、工事は7件増加している。木造住宅密集地域での除却・建て替えの助成も開始し、除却は4件、建て替えは2件の実績がある。

区内の旧耐震基準の木造住宅は未だ2万戸以上存在する。住宅の耐震性強化による安全・安心の確保を急いでいる。

鈴木会長 分譲マンションの管理組合はしっかり機能していると思うが、行政・町会とマンションの連携は不十分だ。賃貸の共同住宅は更によくないという現実がある。いざ災害が起こったときこれでは不安だ。

また、特に100~200戸規模のマンションを開発する際は防災対策は必要。マンション内で防災を自己完結するだけではなく、近隣の人々がマンションに逃げ込めるようにするなど、地域と連携した防災対策を進めねばならない。木造密集地域については小規模再開発を行い、道路幅を広げる必要がある。

坂本区長 板橋区では大谷口地区で住宅地区改良事業により、狭小木造住宅密集を解消し、公共住宅、道路、公園整備を行った事例がある。また、国の防災街区整備事業制度を都内で初めて採用した板橋三丁目地区防災街区整備事業では地域コミュニティの力を生かし、防災街区整備を成功させた。こういう事例が成功すると、周りの地域にもいい影響をもたらす。

鈴木会長 行政が音頭を取り、うまく民間企業を使えば官民でこのようないい街づくりがきっとできるはずだ。

坂本区長 マンションについてはコミュニティづくりが大きな課題だ。08年の住宅・土地統計調査によれば、区内の住宅総数約24万4000戸のうち、54%の13万2000戸は集合住宅で、5万4700戸は分譲マンション、7万7300戸は賃貸住宅だ。オートロックなどが設置されセキュリティーやプライバシーは重視されているが、孤独死の問題など住民の孤立化が懸念される。

都市再生機構の高島平団地はかつて「東洋一のマンション」と言われたが、住民の38%は高齢者となっており、「地域包括ケア施策ビジョン」の策定を3月に行った。また、都住宅供給公社とは、孤独死を防ぐ手立てについての協議を進めている。地域コミュニティと住民ネットワークを強化し、マンションコミュニティにおける課題解決に努めていきたい。

板橋区住宅マスタープランの考え方

――板橋区における住宅政策の在り方を考える「板橋区住宅マスタープラン」について。

坂本区長 第4次マスタープランとして11~20年度の住宅施策の方向性をこのプランで示した。基本理念として、「住宅は人の生活を支える基盤であり、個性を伸ばし幸福をもたらす器」として定義。区民と行政の協働による街づくり、次世代に受け継ぐ住まいと住環境を進めていく方針を示している。

この方針の下に4つの目標を打ち出した。それが(1)安心・安全で良質な住まい・住環境の実現、(2)誰もが地域で住み続けられる、多様な住まい・住環境の実現、(3)環境に配慮した、住まい・住環境の実現、(4)区民と事業者の協働の形成。

喫緊の課題は、震災以降注目されている安心・安全と孤独死の問題。様々な団体などとも協力しながら、目標の実現へ社会全体で取り組む必要がある。

鈴木会長 私もプラン策定に向けて審議会に参画した。住宅に関する深い基本理念があるのは東京23区内に限らず、全国でも板橋区だけだろう。区の政策の根幹となる板橋区基本構想では、子どもの育成環境の整備など17項目の個別目標があるが、その多くは住環境の整備でクリアできる。

マスタープランの基本理念を具体策に落とし込むことが重要。実行に移すために、行政だけではなく民間も含めて地域と一体になって考え、行動を起こすべきである。具体策を推進するためには「板橋区住宅マスタープラン推進協議会」を作ることも必要であろう。

高齢者への賃貸住宅の供給については、板橋区は宅建業者と協力し多くの実績を上げている。この取り組みをもう少し広げて、民間企業があまり入居を好まない障害者や外国人へのセーフティネットも広げていくことも今後は行っていける。

問題なのはマンションと地域のかかわり。マンションが地域との関係を難しくしており、環境整備のため「マンション整備特別委員会」などを設立するのもいいのではないかと考えている。

坂本区長 マンション住民は決して地域にかかわりたくないわけではないと思う。住みやすい街づくりは住民と行政の協働が必ず必要だ。

生活を支えるためには「自助」「公助」「共助」の3つが必要。現在は、人と人とが支えあう「共助」が弱い。マンション内での共助については、マンション内の農園や沿道樹木を、住民が管理するなど「共助」を育むような物件を開発できないものだろうか。コミュニティを形成し、育むことはマンションや街の価値を育むことにもつながっていく。こういう仕組みがもっと出来てくると良いと思う。

マンションと地域との関連性

――マンションと地域コミュニティ、子育てや環境との関連性について。

鈴木会長 区の基本構想17項目のうち、住居に関する直接の記載があるものは1項目しかないが、多くは住生活の向上によって解決できるものである。これを意識して住宅開発を進めていかねばならない。良質な住宅を供給していくことによって、社会問題を解決し、行政の負担を減らしていくことにつながる。

例えば子育てについては、当社では基準を作ってマンションを供給している。当社のマンションでは出生率も高く、埼玉県など行政からも高い評価を受けている。同様のコンセプトの戸建ても作っていく。また、シングルマザー支援のためのシェアハウスも企画している。私は社会問題の中にこそ商機があると考えている。社会問題の解決につながる住宅整備を進めていく。

坂本区長 環境問題も大きな課題だ。区で注力しているのが、建築物の外側に植物を植える「緑のカーテン」。学校での取り組みを進めている。子育てでは、おむつ替えや授乳などが行える板橋区発祥の「赤ちゃんの駅」の取り組みが全国に広がりつつある。

今年は区制施行80周年記念の一環として、「赤ちゃんの駅」をキーワードに、子育て先進自治体の首長を招いてフォーラムを開催する。今後、更なる子育て支援に取り組んでいく。

板橋区基本構想 いきいき暮らす緑と文化のまち〝板橋〟 »

 

板橋区基本構想いきいき暮らす緑と文化のまち〝板橋〟

◎基本理念  (1)いのちと個性の尊重、(2)まちづくりへの参画、(3)未来への責任

◎基本目標と施策の方向

1.のびやかに生きがいをもって暮らすまち

  • (1)安心して子どもを産み育てられるまち
  • (2)次世代の生きる力をはぐくむまち
  • (3)一人ひとりが健康づくりに取り組むまち
  • (4)生涯を通じてこころ豊かに過ごせるまち
  • (5)自立とふれあいにより社会参加ができるまち
  • (6)すべての人が個性や能力を発揮して活躍するまち

2.こころ豊かなふれあいと活力のあるまち

  • (7)地域の課題を協働で解決するまち
  • (8)産業が発展するまち
  • (9)地域資源を生かした新たな産業を創造するまち
  • (10)豊かな地域文化をはぐくむまち
  • (11)異なる文化や価値観を尊重しあい交流するまち

3.安全で安心なうるおいのあるまち

  • (12)安全・安心活動に取り組むまち
  • (13)災害に強く住み続けられるまち
  • (14)地域の個性を生かした美しいまち
  • (15)環境を守り資源を大切に利用するまち
  • (16)暮らしに便利な道路・交通網があるまち
  • (17)情報の保護と活用を図るまち(2005年11月策定)

板橋区住宅マスタープラン 第4章 住宅施策の考え方

【基本理念】

「住まいは、いのちを守る基盤、個性を育む器」(板橋区基本構想の基本理念=いのちと個性の尊重」
「区民と行政の協働による住まい・まちづくりへの参画」(同=まちづくりへの参画)
「環境や美しい街並みへの配慮等、次世代に引き継ぐ住まいと住環境」(同=未来への責任)

【基本目標】

「いのちを守り・育み、安心して暮らせる“豊かな住生活”を目指して」

【個別目標と成果指標】

<個別目標1> 安全・安心を提供する住まい・住環境の実現
○地震に強い住宅ストック、安全な市街地の形成
○バリアフリー化された住宅ストックの形成

<個別目標2> 多様な選択肢のある住まい・住環境の実現
○世帯の要望や世帯人数に応じた規模の住宅ストックの形成
○入居に関する条件が制限されていない住宅の流通

<個別目標3> 居住価値が確保・活用されている住まい・住環境の実現
○適切な住宅ストックの維持管理
○中古住宅ストックが適切に評価されるような住宅市場の形成
○環境問題に配慮した住宅ストックの形成
○景観に配慮した住宅ストックの形成

<個別目標4> 区民の参画と、区民と行政の協働の実現
○区民の住まい・まちづくりへの関心、主体的な参画
○区民や事業者の住宅施策における各々の役割の明確な理解

「新しい公共」の実現を目指した「協働」による取り組み

※第1章「住宅マスタープランの目的と性格」、第2章「見直しの視点」、第3章「住宅施策の課題」、第5章「住宅施策の展開」、第6章「区民の行動目標」は省略


居住支援協議会について住宅対策審議会で検討

板橋区住宅基本条例に基づく住宅対策審議会の第8期(平成24年7月から2年間)審議事項として、(1)高齢者の居住支援、(2)子育て・安全安心がある。その中で居住支援協議会の設置が予定されている。
「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づき、低額所得者、被災者、高齢者、障がい者、子どもを育成する家庭その他、住宅の確保に特に配慮を要する者(住宅確保要配慮者)が「民間賃貸住宅」に円滑に入居できるように、地方公共団体や関係業者が連携して組織する合議体のこと。すまいの安心ネットワークである。
居住支援協議会のイメージは、構成する板橋区(住宅部局・福祉部局)、不動産関連団体(宅地建物取引業者、賃貸住宅管理業者、家賃債務保証業者、家主など)、居住支援団体(NPO法人、社会福祉法人など)の各構成員がそれぞれ密に連携を取ることで、「きめ細かなサービスの実現を図る」ものだ。

平成23年度までに全国16の地方公共団体が居住支援協議会を設立している。国庫補助の対象事業でもある。


東京で一番住みたくなるまち板橋ナンバーワンを目指して
坂本区長マニフェスト達成のための取り組み  坂本マニフェスト

<no.1実現プラン 第1ステージ> (平成20~22年度)
◎「3つのナンバーワン」と「10のいたばし力UP」

□あたたかい人づくりナンバーワン

  • (1)人づくり力UP…  食育、学校教育、青少年健全育成、社会教育、スポーツなど
  • (2)子育ち力UP… 子育て支援、保育など
  • (3)医療・福祉力UP… 健康、福祉、障がい者の社会参加・就労支援など

□元気なまちづくりナンバーワン

  • (4)自治力UP… 情報公開、区民参加、協働、コミュニティなど
  • (5)シニア世代力UP… 生涯学習、生涯スポーツ、高齢者の社会参加・就労支援など
  • (6)産業活力UP… 産業、観光、文化・芸術など

□安心・安全ナンバーワン

  • (7)安心・安全力UP… 防犯、防災、交通安全、バリアフリーなど
  • (8)緑と環境力UP… 水と緑、都市景観、環境など
  • (9)都市再生力UP… 耐震化・改築・改修、市街地整備、道路整備、公共交通など

□3つのナンバーワンに共通して

  • (10)区民くらし充実力UP… 男女平等、消費生活、情報化など

<no.1実現プラン 第2ステージ> (平成23~27年度)
◎「いたばし力」ナンバーワンに向けた3つの実現

  1. 「ひと」と「ひと」をつなぐ~あたたかい気持ちで支えあうまちづくり… 教育力の向上と学校・地域の連携強化、子育て世代への支援充実、高齢者の生きがいと健康づくり、女性の社会参加の促進など
  2. 「まち」と「ひと」をつなぐ~安全で未来をひらくまちづくり… 地域との連携を深める商店街づくり、ものづくりの魅力向上、まちの個性と魅力を高める文化芸術の振興、災害に強いまちづくりの推進
  3. 「みどり」を「みらい」につなぐ~地球にやさしく品格のあるまちづくり… 低炭素型社会のまちづくり、豊かな次善環境の継承、良好な景観の形成

◆「板橋区経営革新計画」(行財政経営の質を高め、区民本位による区政の実現)の基本目標

  1. 「もてなしの心」で区民本位の区政の実現
  2. 「未来への責任」を果たす健全な行財政経営
  3. 「高い使命感」で挑戦する人と組織づくり

居住福祉の観点が重要板橋・居住福祉円卓会議での坂本区長挨拶文 »

 

居住福祉の観点が重要板橋・居住福祉円卓会議での坂本区長挨拶文

「日本居住福祉学会」は健康・福祉・文化環境として、子孫に受け継がれていく居住福祉社会の実現に向けて調査研究していこうという学会で、今後一層、居住福祉という観点が重要であると考える。安心できる「居住」は、生存・生活・福祉の基礎であり、私たちの住む住居、居住地、地域、都市などの居住環境そのものが、安全で安心して生活し、暮らすというものに他ならない。住宅は、個人や家族にとっての生活の基盤であると共に、社会生活や地域のコミュニティ活動を支える拠点でもあり、潤いとゆとりある生活空間における営みにより、社会全体に活力と安定をもたらしている。

板橋区の「第三次板橋区住宅マスタープラン」では3つの基本理念を掲げた。「いのちを守り・育み、安心して暮らせる豊かな住生活を目指して」を基本目標に掲げて各種施策に取り組んでいる。現在、「第4次板橋区住宅マスタープラン」を策定中だが、基本理念を踏襲しつつ、地域コミュニティの活性化をはじめ、少子高齢化社会に対応した社会基盤づくりをも視野に入れていく。(10年10月)

高齢者への住宅情報提供都宅協板橋区支部、20年の実績

東京都宅地建物取引業協会板橋区支部が板橋区と協力して区内に在住する高齢者向けの住宅相談を開始したのは1992年。3年後の95年には「板橋区住宅情報ネットワーク事業」を確立し、既にその取り組みは約20年の歴史がある。

中村勝次副支部長によると、対象は60歳以上の人のみで構成される高齢者世帯、身体障がい者手帳4級以上または愛の手帳3度以上の人を含む障がい者世帯、18歳未満の児童と父または母のみの一人親世帯、同居親族に18歳未満の児童が3人以上いる多子世帯。住まいを探す上で困難にならぬよう優先的に住宅情報を提供するネットワーク事業。サービスの利用から賃貸住宅の成約に至った件数は95年が69件だったが、04年に年間500件を超え、10年には1000件台まで増加した。

この間、同支部では「板橋区高齢者住宅等斡旋相談員会」を設置して対応を強化してきた。独居老人の孤独死などの問題がより深刻な状況を迎えているが、今後とも「努力は惜しまず、行政、関係団体、諸機関と協議を進めつつ、社会的責任を果たしていく」考えだ。

高島平団地、活性化への取り組み大東大と地元有志が「学生入居」など

1970年代後半、東洋一のマンション団地と言われた板橋区の高島平団地。住宅公団(現UR都市機構)、東京都が賃貸、分譲住宅を計約1万戸供給した。居住人口はピーク時の3万人から2万人に減り、21世紀に入ると、建物と居住者の高齢化が進み、最近では高齢化率が34%という「限界集落」並みの状況で、かつての輝きを失った。

何とか再生したいと、動き出した活動の一つが「みらいネット高島平」だ。地元の大東文化大環境創造学部の教員と学生、高島平住民の有志が立ち上げたプロジェクト。月に一度の話し合いの場「三者協議会」で意見交換して、協力しながら活動を進めている。そもそもは、「地域活力の衰退に対する住民の自律的活動を支える」ことを目的にした活動だ。

具体的には、

  1. 団地の空き部屋を大学が借り上げて学生に貸し出す「高島平団地学生入居プログラム」(11年実績22人)、
  2. ハーモニカ教室や書道教室などを行う「コミュニティカフェ・グリーンの運営」、
  3. 公開講座「膝イタ体操」、
  4. インターネットラジオ(大東大ラジオ)

――などを実施している。