政策

社説 不動産流通市場の活性化 フォーラム提言を生かそう

 中古住宅流通の活性化策を話し合う国土交通省の有識者会議「不動産流通市場活性化フォーラム」(座長・中川雅之日大教授)が6月12日、取りまとめ会議開き、提言案を示した。政府の新成長戦略に盛り込まれた「中古住宅流通・リフォーム市場を倍増させる」ため、昨年10月から合計7回会議を重ねてきたものだ。近々、最終提言がまとまる予定だが、これを機会に流通市場活性化へ具体的な第一歩を踏み出してもらいたい。

 提言案は不動産流通市場の課題として、(1)取引に当たって、消費者の求める情報が適時適確に提供されていない(住宅の性能や劣化状態に関する情報、価格に関する市場動向の情報など)、(2)不動産事業者等が消費者のニーズに十分応えられていない(インスペクションやリフォームニーズ、価格査定の透明性が不十分など)||ことを指摘している。

 この課題を解決するための方策として、大きく3項目を掲げ、具体的な実施内容を示した。第1は「円滑な不動産取引のために必要な情報の蓄積と提供」。消費者に必要な情報の整備・提供をどう進めるかが柱だが、物件情報の中にインスペクション、地盤履歴などどう組み入れるか、成約価格情報の取り扱いなどが焦点となる。第2は「消費者ニーズに対応できる不動産流通システムの整備」。リフォーム提案を含めた新たな流通ビジネスモデルの育成・支援と、価格の透明性(建物評価基準見直し)の向上がポイントだ。

 3つ目は「不動産流通市場の活性化に向けた環境整備」。ここでは宅地建物取引業者と従業者の資質の向上、多様な既存ストックの有効活用の促進を柱とした。仲介業者の資質向上では一般従業者、営業マンにまで踏み込んだ研修制度の必要性を説いているほか、ストック活用では増え続ける「空き家」の再生・循環活用の促進まで守備範囲を広げたのも特徴だ。

障壁を取り除いて

 こうして提言案をふかんすると、物件や価格情報の提供の在り方や業界の資質向上など従来からの懸案に、消費者が求める新たな需要が課題として加わった構図だ。いずれも実現には障壁がありそうで、道のりは平たんではない。難関を一つひとつ取り除いていく努力が必要になる。

 不動産流通経営協会の推計によると、11年度の中古住宅流通量は48.4万戸にとどまり、前年度よりわずかに減少した。この状況を打開するには、消費者目線を意識た提言案をいかに具体化できるかが鍵になる。それは売主、買主双方の利益につながると同時に、市場そのものの活力を呼び、それが業界の活性化にも結びつく。大いなる推進を期待したい。