政策

社説 進化するスマートハウス 技術開発で明るい未来を

 和田勇・プレハブ建築協会会長(積水ハウス会長)は、「スマートハウスの普及は住宅の付加価値を高めるだけでなく、省エネ・創エネ・蓄エネに係わる技術革新を伴い、住宅を日本の新たな成長産業に押し上げようとしている」と指摘する。久しぶりに聞く、明るい話である。

 スマートハウスとは、IT(情報技術)を使うことで家庭内のエネルギー消費が最適に制御される住宅をいう。そのために必要となる中核技術が「HEMS(ヘムス)」である。ホーム・エネルギー・マネジメント・システムの略だ。HEMSは家庭内でどれだけのエネルギーが、いつ、どこで使用されているかを「見える化」するだけでなく、家中の家電機器を一括コントロールしてエネルギーの使用量を自動的に制御する機能を持つ。

 例えば、同じ部屋でエアコンと扇風機が同時に使われると、優先順位をあらかじめ定めておけば、どちらか一方の電源が切れるようにすることもできる。太陽光発電(PV)や電気自動車(EV)の蓄電池などとも連携させ、PVの発電機能が低下してきたらEVからの電気を使ったり、電力使用量全体を抑えたりすることもできる。

普及の基盤整う

 本格的な普及に向けての課題がHEMSと家庭内機器をつなぐインターフェースの標準化だったが、今年2月に経済産業省が標準規格として「ECHONET-Lite」を推奨することを決定するなど、基盤整備も整いつつある。

 今後の課題は各種機器設備の導入コストだが、その低減化を実現するためには、国民がスマートハウス普及の意義を正しく理解することが必要である。地球環境を守るための省エネ努力の重要性は言うに及ばず、新しいエネルギー関連の技術開発が日本経済の再生につながる可能性がある。

 例えば、燃料電池はスマートハウスに欠かせない重要なファクターだが、もし、今話題となっているメタンハイドレートの商品化が実現すれば、海洋国である日本がエネルギー大国に生まれ変わり、燃料電池にも飛躍的メリットをもたらす可能性がある。

 掛け声倒れが多い新成長戦略だが、スマートハウスは各メーカーなどによる実証実験も着実に積み重ねられてきている。日本の未来を明るくする産業の芽が生まれつつあることに、住宅不動産業界は積極的にコミットしていくときである。