1国2制度といえば香港が真っ先に思い浮かぶ。香港の中国返還が差し迫る中、政権の影響力が強まることを心配した国外流出も話題になったが、今の香港は当時の混乱などまるで嘘だったような繁栄ぶりだ。返還先の中国も、実は都市と農村という実質的に2つの制度が存在していたと指摘する専門家もいる。様々な問題を抱えながらも、微妙なパワーバランスの上に、現実に2制度が成り立っていた。
▼これが単なる経済発展の恩恵に過ぎないのか、国の統治機能として本当に優れているのか、結論を出すにはまだ時期早尚だ。とは言え、1国2制度には社会の矛盾や経済の格差などをある程度コントロールできることが、香港の例からもうかがい知ることができる。日本も戦前は国外、戦後は国内でそれに似た状況が一時的にあった。戦後の一貫した中央集権体制により、1国1制度の国づくりが進められてきたが、多様化や二極化が進む現代日本にはもはやそれはそぐわなくなってしまった。
▼都市と地方の問題はその象徴で、先行き所得格差なども深刻化していくに違いない。また経済優先とライフスタイル優先という対立軸も国民の間に広まりつつある。地方分権や道州制などが話に上がるのもそんな国の行く末を案じているからに他ならない。成熟社会こそ1国2制度を求めているとしたら、検討の余地は高い。