総合

大言小語 不都合な真実

 日本のGDPは10年に中国に抜かれて3位に転落したが、93年から00年まで世界1位だった1人当たりGDPが17位になっているという「不都合な真実」は、ほとんど報道されていない。ここに日本の停滞があると思う。

 ▼埼玉県広報紙・彩の国だより5月号のコラムで、上田清司知事が指摘している一節だ。成果を出す行政を意識している知事は、「不都合な真実」は役所文化の中では隠されてしまいがちであるともいう。県や国の枠を超えて、財政問題や長引く不況対策、更に原発事故対応など、残念ながら、「不都合な真実」には事欠かない。

 ▼それとどう向き合えばいいのか。まず事実関係を明らかにして、原因を分析することだ。国全体では3位だが、個人レベルでは17位まで下がる凋落ぶり。所得格差が拡大し、勤労者の収入は下がり続け、生活保護受給世帯が過去最多となった現実も。何をしてきて、何をしてこなかったのか。経済も原発問題も、失敗した事実の分析と総括が必要だ。

 ▼「外国企業の賃貸面積は縮小傾向が続き、働く人の数も減少している。アジアの拠点は他国に移り、東京は事務所になってしまった。国際都市間競争に負け続けている」。危機感を募らせるのは木村惠司・不動産協会理事長。この「不都合な真実」を乗り越えるためになすべきことは、事実関係の直視と地道な行動しかない。