総合

大言小語 言葉のひとり歩き

 北朝鮮がミサイル発射という強硬手段に出たが、空中分解し、失敗した。国内、そして国際社会にどういう態度を示すか。強い姿勢と粘り強い対話という難しい対応が日本には継続して求められるが、残念ながら現政権では心もとない。

 ▼ところで、このニュースを伝える際にテレビなどは、「北朝鮮が人工衛星と称する事実上のミサイル」という、長ったらしい定型句を使っていた。2回3回と使われると、この持って回った言い方が聞きにくい。ちょっと昔なら、「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国」という枕詞もあったので、これを先ほどの文句と組み合わせたら、まるでマンガである。何とかならないものか。

 ▼同じような定型句では、「社会保障と税の一体改革」がある。「社会保障と税の一体改革を進めるためには、消費税の増税が不可欠である」といった具合に使われるのだが、これも頻発されると煩わしい。なぜかと考えると、こちらの言葉の方は全く実態を表していないからだ。税の論議だけが進行し、社会保障については全く将来像が見えてこない。そんな中で、「社会保障と税の一体改革」という言葉だけがひとり歩きしている感じを受けるのだ。

 ▼言葉や文章は人の心を打つ。聞く、あるいは見る人の人生までも変える力がある。しかし、それは中身を伴っているからだ。言葉だけのひとり歩きには、国民は誰もついていかないだろう。