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大言小語 消費税を考えよう

 社会保障の方がろくに議論されない中、消費税増税法案が閣議決定され、論戦の舞台は国会に移った。マニフェストや政策合意にない増税を巡り、与党内が分裂気配となり、野党も様々な条件を投げつける。政局は「嵐の前夜」の様相だ。

 ▼政府案は現行消費税率5%を14年4月に8%、15年10月に10%へと段階的に引き上げるものだが、景気条項も「努力目標」として付けられた。財政健全化のために「消費増税」を容認する見方もかなりあるが、かつてない不況時だけに、慎重論も根強い。

 ▼もう10数年、勤労者世帯の年収は減り続け、雇用環境も改善されないまま。自殺者の数は14年連続で3万人を超え、生活保護受給世帯は200万人を突破して最多を更新中だ。所得配分の不均衡や社会保障制度の貧困で貧富の格差が広がると同時に、厳しい状態に追い込まれる人が増えている。

 ▼消費税には様々な制度上の不備や欠陥が指摘される。最終的に弱い立場の企業や商店、生活者にしわ寄せがいくこと、贅沢品も生存のための食料品も税率が同じということも。だから、国民の夢の実現である住宅取得の際には、消費税だけで数百万円にもなってしまう。

 ▼さすがに政府も住宅取得への配慮を打ち出してはいるが、欧州では当たり前の複数税率がなぜ我が国で実現できないのか。法案の行方だけでなく、改めて消費税のあり方を考える必要がある。