昨年後半から、公益法人制度改革に基づいて公益法人の新法人への移行が活発になってきた。不動産業の協会・団体の間でも新法人移行が進み、大手系は一般社団、中小系が公益社団という大方の色分けもはっきりしてきた。
事業比率がハードルに
公益法人改革では、「民間非営利部門の活動の健全な発展を促進し、民による公益の増進に寄与する」ことが目的のひとつに掲げられている。平成25年までに既存の公益法人の全てが一般の法人か、公益の法人に移行することとされている。このうち税制優遇が設けられる公益社団、公益財団については、(1)公益目的事業を主たる目的とする(2)公益目的事業の収入が適正費用を超えない(3)公益目的事業比率が2分1以上見込める、などの認定基準を満たす必要があり、公益化にあっての大きなハードルとなっている。
公益化を目指してきた中小不動産業界では、早いところでは04年ごろから公益法人改革の検討や対応を見せる動きが見られたが、期限が迫った近年は通常総会や臨時に開かれた総会でその選択を巡って熱い議論も繰り広げられた。
議論の的となったのは、50%以上の事業比率が科せられる公益事業が主事業になると会員による会員のための組織として発足し、長らく運営されてきた協会の存在意義が大きく変わってしまうこと。更には会員サービスの低下につながるのではないかといったことが危惧されたことによる。
こうした中、昨年12月に全日本不動産協会の保証事業を行う不動産保証協会が公益社団への移行を済ませた。今春には全国宅地建物取引業協会連合会も公益社団に移行することが決定。共に事業の両輪である保証協会と併せた公益社団への完全移行を目指している。
保証協会は事業の両輪
宅建業法に定められた保証協会は、不動産取引に係る苦情の解決や弁済業務などを行う公に位置付けられた機関であり、不動産取引における消費者保護を主な事業としている点で公益社団化にふさわしい。情報公開も含め保証協会の透明性を高めていくことになる公益化が、会員会社、更には不動産業界全体の信頼を高め、社会的地位の向上にも寄与することは明らかだからだ。そしてその保証事業を推進するために、会員会社の資質向上に取り組んでいる各協会組織もまた公益社団を目指すのは当然のことと言える。
デフレ市況や大手の寡占化、後継者難など課題が山積する中小業者の経営は年々厳しさを増している。公益社団へ進んだ協会は保証協会と共に、公益化の果実を一刻も早く会員業者に還元することが次なる課題であり、時間の無駄は許されない。