総合

社説 「20年の東京」で進む耐震化

民間の力生かし促進を

 東京都は昨年末、10年後の大都市・東京のあり方を示した8つの目標からなる計画「20年の東京」をまとめた。07年に策定した「10年後の東京」(07~16年)をほぼ踏襲し、今後の都の政策展開を描いた新計画だ。当然、東日本大震災で露呈した都市機能の脆弱性も十分考慮に入れ、防災対策、エネルギー政策、国際競争力向上の3点にも重きを置いた内容に拡充された。同時に再生日本を牽引する首都東京という立場からも、グローバルな都市間競争を強く意識しながら東京の活力と魅力を再構築する内容にスケールアップしたところが新計画の大きな特徴といえる。

 

20年には人口減少へ

 現在、東京の人口と世帯数は1316万人、638万世帯で、当面は増加傾向が続くと見られているが、人口は20年の1335万人を、世帯数も25年の663万世帯をそれぞれピークに減少に転じると想定されている。世界に先駆けて超高齢社会に突入していくことや、高齢者を支える年少人口、生産年齢人口の減少も見込まれる。厳しい経済情勢と財政事情という重荷を抱える中で、社会の大きな転換を図りながら、再び大都市として成長を目指していかなければならない点で、計画遂行には課題も山積している。

 計画実現に向けては12のプロジェクトが掲げられた。初年度からの3カ年(12年度~14年度)で、住宅・不動産分野を含む22の施策370事業があり、この期間の事業費だけでも2.2兆円にも上るビッグプロジェクト。ビジネスチャンスと見る民間の期待も高い。

 施策の中で特に優先度が高いのは、震災対策だ。近い将来に発生することが予測される首都東京を襲う大規模地震に備えた都市整備に、3カ年で6578億円の事業費を計画している。中でも特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化は昨年、都が全国に先駆けて一定条件の沿道建築物に耐震診断などを義務付ける条例として制定。診断費用を全額助成し、13年度までに耐震診断完了を目指している。更に耐震化の設計・改修についても、建築物の面積によって3分の1から最大6分の5の費用が助成されることになっている。

 

経験豊富な民間

 阪神淡路大震災の教訓からこれまでその必要性が叫ばれてきたにもかかわらず、コストや合意形成などがネックになって一向に捗らなかった耐震化が、これを機に一気に進展することが期待される。残る課題は時間との戦いだ。建築物の管理や改修は個別性が強いため、事業を実施していくには専門的なノウハウや知恵が求められることになる。耐震化を迅速かつ効果的に進めるうえで、経験が豊富な不動産業界に対する期待は高い。業界の果たすべき社会的役割は大きい。