総合

国内誘致と海外進出

 「東京を拠点にする外国企業50社以上、その他の外国企業500社以上を東京に誘致」。不動産業界には願ってもない話が東京都の計画「20年の東京」に盛り込まれた。その経済効果は14兆6000億円、100万人近い雇用誘発効果も期待できるとされるだけに、オフィスの新規需要によるビル市況回復、不動産市況底入れ、更に景気浮揚へというシナリオも浮かんでくる。

 ▼外国企業誘致にあたっては、急成長を見せるアジア主要都市に比べてハードルが高いと言われてきたいくつもの分野で都独自の促進策が講じられる。税制上の優遇、ビジネスや生活環境の支援、外国企業と国内中小企業が互いに刺激し合えるような市場づくりにも取り組み、東京誘致をより付加価値の高い魅力あるものにするという。国際レベルでは円高、人材などの面で海外進出の流れが止まらない。需要拡大に限界がある国内市場はほどほどに、海外に広く活路を求める動きは当然の成り行きだ。むしろ競争力を高めるためには海外進出は避けて通れないという意見も正論だ。

 ▼「20年の東京」に象徴される国内誘致の動きがある一方、日本企業の海外進出も時代の要請。日本は今まさにこうした相反する動きの渦中にあり、互いのメリットが相殺されてしまう弊害もあるように思える。出すものと留めるものの選択を間違えると、景気回復は遠のくことになる。交通整理が肝心だ。