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「AD」のシグナル

 賃貸物件情報の中に「AD100」とか「AD50」という表示が増えてきた。広告費を示す業界の隠語である。「アドバータイジング」の略だと思われるが、これが意味するのは、「100」は家賃の1カ月分、「50」はその半分を支払うという報酬に関する情報だ。つまり、通常の手数料のほかに、家主側が広告費として「報奨金」を出すということを明示しているのだ。

 ▼それが東日本不動産流通機構の登録物件情報に、それも検索結果一覧で目を引くように「所在地名3」や「建物名」の項目の中に目立ち始めた。同機構では、「無関係な内容は不適切」であることのほか、宅地建物取引業法の報酬規定にも抵触する恐れがあると、不適切な登録ができないよう是正に乗り出した。だが、そうした記述は不動産情報サイトや図面配布などでも目立ち、半ば商慣習化しつつあるとの見方もある。

 ▼元々は「担当者ボーナス」と言われ、不動産ファンドが所有物件を満室稼働にして売却する際に利用して始まったという指摘もあるが、かなり以前から客付けが難しい案件で密かに行われていた『窮余の一策』だった気がする。

 ▼それで「業界の担当者が張り切ってくれて」決まるとは限らない。ただ、ここまであからさまなのは厳しい市況の裏返しだ。これは難局打開を図る業界関係者の動きを示すシグナルであり、どう受け止めるべきか、考えさせられる。