政策

社説 普及期迎えた環境不動産

震災経て目標から使命に

 環境不動産を巡る議論が活発化してきた。ビル・マンションなどの環境性能評価が一定の普及を見せ、評価の対象も新築から既存ストックへと広がりはじめている。地球温暖化防止を掲げた京都議定書の発効を機に、不動産の環境対応が叫ばれて久しい。ここにきて一層関心が高まってきたのは、東日本大震災を機に節電・省エネが長期的に求められていることや、世界の環境不動産の潮流に遅れまいとする気運の高まりなども背景にある。

 代表的な認証制度には、海外のLEEDやBREEAM、国内ではCASBEEが挙げられる。これらがスタートしたのは海外が90年代、国内は00年代初頭。環境不動産の定義付けもこれからの日本はいわば後発だ。海外で普及する評価基準や認証制度と、国内のそれとの整合性をどのようにとっていくかなども、普及促進と並行して大きな課題となっている。

 東日本大震災の起こった今年に入って、金融機関が相次いで環境不動産の認証制度を独自にスタートさせたことも、普及に向け追い風となった。日本政策投資銀行の「DBJグリーンビルディング認証」と三井住友銀行の「SMBC環境配慮ビルディング評価融資」がそれで、共に既存ストックも重視し、ビルの経営や運営、周辺環境への影響、テナントとの協力体制なども審査対象としてスタート。認証の付与にとどまらず、新築や建て替え、改修などを資金面でも支える仕組みで、オーナーに実利がある点も特徴だ。

 春の認証開始から政投銀の「グリーンビル」はハイペースの認証取得が続いており、Jリートなどでも前向きな導入姿勢がうかがえる。三井住友銀行の「SMBC環境配慮ビルディング評価融資」も、築20年以上が経過した東京証券取引所の入る「東京証券取引所ビル」が初取得した。

 こうした中、11月上旬に国土交通省で関係省庁や自治体、不動産、金融、投資会社などが集まり、「環境不動産」をテーマにした業界横断型の懇談会が開かれた。ビルなどの環境価値が評価される仕組みづくりなどについて意見を交換し合い、環境不動産の普及促進に向けた提言を今年度中に取りまとめる。

 初会合では、環境不動産の普及については総論賛成、各論になるとそれぞれの意見や思惑が入り交じる場面も見られた。不動産業界からは、コスト増とそれに見合う需要は限定的といった弱気の意見も聞かれた。

 震災を経た今、節電や省エネの促進につながる「環境不動産」の供給や整備は、目標ではなく使命に変わった。普及のカギを握るコストと需要を両立させる知恵と工夫と努力がより求められることは必至。不動産業界が果たすべき社会的使命は重い。