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「大言小語」 後戻りできない節電

 今夏、全国規模の取り組みとなった電力の使用制限。政府が当初、目標に掲げたのはピーク時における電力使用の25%削減だった。準備期間もない中で掲げられた高い目標に戸惑いも見受けられたが、最終的には目標値が15%に引き下げられて、日本初の大々的な節電が一斉にスタートした。

 ▼対象期限が終了し、少しずつだがその取り組みの状況が明らかになってきた。業界内でも早い時期に結果を発表した森トラストグループは、所有するビルや施設における平均削減率が33%に達した。日本ビルヂング協会連合会がまとめた東日本エリアの会員が取り組んだ節電の削減率は、東京電力管内が平均23%、東北電力管内が平均20%に上ったという。もちろん他業界や家庭、個々人における節電の取り組みも積み重なって、当初心配されたような混乱を回避することができた。

 ▼振り返れば、省エネや節電が大々的に叫ばれ始めたのはオイルショック以後。省エネルックなるスーツが登場した70年代に始まり、00年前後には既に住宅向けの太陽光発電システムが商品化され、普及の兆しを見せていた。省エネに対する意識が高まっては冷めてが繰り返されてきた訳だが、原発に頼り続けることのリスクを思い知った今回ばかりは後戻りは許されない。暑さに耐えながらも、長い階段を登った経験をよりよい社会に変えていくための原動力にしたいものだ。