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社説 節電の夏に揺れたビル業界 絶えず進化する環境ビルへ

 震災と原発事故に伴って今年7月から9月にかけて全国的な取り組みとなった政府主導の夏の電力使用制限も、混乱なく無事に乗り切ることができた。だが油断ができない状況には変わりなく、エネルギー対策、とりわけ節電には継続して取り組まなければならない。

 依然、空室率が高い水準にあるオフィスビル業界では、電力使用制限が始まる直前まで15%削減の基準となる昨年のピーク使用量の設定をめぐって混乱が生じた。前年ピーク比で一律15%の使用電力削減が、入居状況をはじめ事情が異なるテナントビルにも一律に課せらることになったからだ。

 基準の設定では国と業界の立場に温度差が見られたが、全ての国民が節電に向けて協力し合うという雰囲気が生まれたことも事実。テナントの協力が節電・省エネのカギを握るといわれるビル業界には追い風となり、節電対策に向けたテナントとの協働が進展。相当の実績を上げたビル事業者も多くいたに違いない。

 

削減率は最高43%に

 森トラストグループが期間終了後にいち早くグループ全体の夏の節電結果をまとめている。それによると、東京電力管内にあるオフィス、ホテルなどの同社の全対象事業所における期間中の平均削減率は33%を超えた。1日の使用最大電力の昨年比最高削減率にいたっては43%に上ったという。これには、社内に専門の推進チームを発足させ、入念な計画のもとに取り組んだ努力もさることながら、事業所ごとにテナントと一体となって節電に取り組んだ効果も大きかったと同社では報告している。今後、こうした電力使用制限の実態が徐々に判明してくると思われるが、これからの節電・省エネに向けて今夏の経験を生かすためにも、多くのビル事業者に今回の節電に係る情報開示を求めたいところだ。

 

関心高まるグリーンビル

 一方、市場ではBCPを重視したオフィス選定の動きや省エネ・環境対策に対するテナント意識の高まりを背景に、防災機能と環境対応に優れたグリーンビルディングの人気が高まってきた。認知されはじめてからまだ日も浅いグリーンビルディングについては、その定義も確立されてはいないが、多くの専門家の意見などをまとめてみると、安全と省エネに快適さを兼ね備えたオフィスビルというところが大まかな定義になるだろう。

 また実務家からは、グリーンビルディングは、時代のニーズと共に絶えず進化を遂げていくべきとの指摘も聞かれる。何事も一つの枠に収めてしまいがちな日本の風潮からは離れて、テナントとオーナーが手を携えて、絶えず安全、省エネ、快適さを追求し続けることを、グリーンビルディングとして位置付けてもよいのではないだろうか。