Web特集

持続可能なまちづくりへ タウンマネジメントに注力

【住まいと暮らし特集】

産学官で団地再生、コミュニティ拠点を創出

 積水化学工業は、埼玉県朝霞市のスマートシティ「あさかリードタウン」の複合開発を機に、タウンマネジメント事業に参入。戸建て・マンションの一体的な管理のほか、IoTやセンシングなどのデバイスを活用したコミュニティの運営支援や生活サービスの拡充に乗り出した。PLTも、将来的にはまちの維持管理や暮らしサポートなどのサービスプラットフォームの構築に取り組む方針だ。
 街の〝持続可能性〟にはコミュニティを形成する〝ヒトの力〟も不可欠だ。大和ハウス工業は、1970年代に横浜市栄区に開発した「上郷ネオポリス」(総戸数868戸)の再生に産学官で取り組んでいる。高齢者が住民の過半数を占め、小学校は閉校、店舗の閉店も度重なり、地域課題となっていた。
 同社は2014年に「上郷ネオポリス」の住民との意見交換を開始。16年には地元の自治会や明治大学・東京大学とともにまちづくり協議会を発足した。
 19年10月には、コンビニエンスストアやコミュニティスペース、生活に関する相談窓口や情報発信などの機能を備えた「野七里テラス」をバス停の隣接地に開所した。これは、17年に協議会が実施した「全戸住民意識調査」によって、「買い物・交通の不便」や「高齢者の見守りや支え合い」といったニーズが改めて浮き彫りになった結果を受けたものだ。
 「野七里テラス」の運営には、地域住民からボランティアのサポートメンバーを募集し、住民自らが施設内外の整備や来客のサポート、イベントの企画・運営などに携わる仕組みを構築した。
 同施設の開所を契機に、コンビニ商品を乗せた移動販売車が駐車場などエリアの空きスペースを巡回するなど、店舗の閉鎖などで買い物の不便を軽減する取り組みも始まった。街中には〝人だまり〟ができ、買い物をきっかけに、交流を楽しむ住民たちが増えてきていたという。

〝ウィズコロナ〟に対応 代替イベント開催も
 〝にぎわいの創出〟は奏功したものの、昨年以降の新型コロナ感染拡大で状況は一変。数か月にわたり、「野七里テラス」もコミュニティスペースの休止を余儀なくされた(現在は再開)。一方で、自治会館には遠隔対話機能を持つパーソナルアシスタントロボット「temi」を設置。自治会の定例会は自宅から参加する〝ウィズコロナ〟のリモート形式に移行した。
 また、従来の夏祭りは中止になったものの、8月下旬には代替えとして〝街まるごと七夕まつり〟を、更に、12月24・25日には〝街まるごとクリスマス〟を開催した。今年3月には、長野県東御市とオンライン交流会を開催、相互に音楽ライブを生配信した。今後も、バーチャルとリアルを融合したコミュニケーションの普及を目指す方針だ。

住民と二人三脚、活動担い手も掘り起し

 ポラスグループは、分譲地対抗の運動会やボウリング大会といったイベントなど、分譲地を引き渡した後も住民間の交流の機会を積極的に提供している。中でも、千葉県・埼玉県を中心に分譲戸建住宅を供給している中央グリーン開発は、「サスティナブルなコミュニティは住む人を幸せにする」という企業方針を掲げ、時には入居者にとどまらない〝地元の声〟も取り入れながら、持続可能なコミュニティ形成を含めた開発に取り組んできた。
 2016年11月には、同社が10年にわたり千葉県野田市光葉町で分譲を進めた「パレットコート七光台」(総戸数1035戸)の一角にコミュニティカフェを開設した。敷地・建物は同社の旧千葉支店。同分譲地の販売終了後の2014年に支社は移転した。
 移転当初は、建物を解体し、跡地に分譲戸建住宅の開発を計画していたものの、〝(同社に)残ってほしい〟という既存入居者の声や、スクラップ&ビルドに対する社内での異論を受け、旧支店を活用する方針に転換。地元自治会の参加率低下といった地域課題の解決に乗り出した。地元住民のニーズのヒアリングや検討会を兼ねたワークショップ「光葉町ミライ会議」を、1年以上にわたり実施。スタートアップ支援や地域住民の雇用創出も目指すコミュニティカフェへの再生を決定した。
約1万2000㎡もの信用金庫研修所の跡地だった、埼玉県越谷市の新築分譲戸建住宅地「パレットコート北越谷フロードヴィレッジ」(総戸数64戸)の開発は、解体や施設併設など、既存の地域住民との二人三脚さながらだった。
17年4月の旧研修所の解体時には、跡地のグラウンドを利用していた地域住民を招き、「棟下式(むねおろしき)」を開催。神事や餅撒きをはじめ、施設内の備品を無償提供する「お宝発見ツアー」や野外映画上映会などを盛り込むなど、最後の〝思い出作り〟の機会を提供した。
また、市の条例のもと18年12月に竣工した集会所「みずべのアトリエ(南荻島出津自治会館Ⅱ)」の新設にあたっては、隣接地の自治会とともに、地域住民を集めたワークショップ「南荻島未来会議」を開催。時間をかけ、地域のニーズを掘り起こした。同施設が竣工した後は、住民や近隣の学生有志による「南荻島まちづくりサポーター」が発足。地域資源の河川敷も一体で活用することを視野に、施設の活用法を定期的に検討するなど、次世代の地域コミュニティの担い手も創出した。

入居者交流を支援、全分譲地に対応へ

 同社は、2001年の埼玉県越谷市の全23棟の戸建分譲地で入居記念パーティーを催したのを皮切りに、規模や分譲地の特色に応じ、植栽や収納や防災といったテーマでワークショップやイベントを催すなど、入居者同士の情報共有やコミュニティ形成の支援に取り組んできた。当初は20~30棟規模がイベント開催の目安だったが、14年には、入居者コミュニティ促進施策をパッケージ化することで、担当者が変わってもコミュニティ支援が継続できる仕組みを構築した。それ以降は、規模を問わず、全分譲地で実行している。
 パッケージの内訳は、①入居時交流会、②住民同士の交流会やイベント開催の一部物品補助やアドバイスなどのコミュニティサポート制度「マチトモ!」③入居者向け情報誌「スマイリング」(年3回発行)④問い合わせ窓口「暮らしのコンシェルジュ」⑤管理組合、建築・景観協定の導入。入居者向けの情報紙を販売ツールにも活用していた営業担当者からの声も全分譲地での実施を後押しした。

オンライン活用で 交流会の機能が進化
 昨年5月以降は、新型コロナウイルス感染防止のため、入居者交流会やセミナーなどのコミュニティイベントは、ウェブ会議用ツール「Zoom(ズーム)」を活用し、オンラインに切り替えつつ継続している。チャットやグループ分けといった機能を活用することで、導入や合間のコミュニケーションが拡充。今後の活動のキーパーソンを掘り起こしやすくなった。事後調査では満足度の向上も見られるようになったという。