【不動産テック.BIZ PRESETS WEBセミナー】2022年、不動産実務はどう変わる? ー電子契約解禁で進むデジタル化ー

住まいの需要変化 重要性が増すDX推進【不動産テック特集】

連載 Web特集

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特別寄稿 一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会 佐々木正勝会長

デジタル化社会に向けて 今、なすべきこととは

 現在、政府においては、デジタル化社会形成の基本原則(①オープン・透明、②公平・倫理、③安全・安心、④継続・安定・強靭、⑤社会課題の解決、⑥迅速・柔軟、⑦包摂・多様性、⑧浸透、⑨新たな価値の創造、⑩飛躍・国際貢献)に基づき、「デジタル社会の生成を図るための関係法律の整備に関する法律案」が閣議決定され、今国会での成立に向けて審議がなされている状況です。

 本法案では、デジタル庁の設置のほか、不動産関係では重要事項説明書、契約締結時の押印廃止や契約書等の電磁的書面交付が盛り込まれております。

オンラインの活用

 また、昨年からのコロナ禍での状況下で、非対面による物件の内覧等、オンラインを活用した物件案内等の需要も増えてきました。

 新型コロナウイルス感染拡大の防止に努めるなかで、私たちの生活様式も一変しました。特に「住まい」への考え方は、さらに多様化している状況です。

 テレワークの導入により毎日の通勤時間を気にせずに、郊外へ住まいを求める需要や、逆にテレワークが難しい方は、なるべく勤務先近くの物件を希望する需要も出ています。さらに、昨年入学した大学生はオンライン授業が大半で、大学近くに借りた物件を解約して実家に戻るといった事例もありました。

 私たち管理業者は、このような状況を踏まえ、貸主の貴重な資産である賃貸物件を適正に管理し、借主からの要望にも臨機応変に対応していかなければなりません。

個々のスキルも重要 一層普及するITツール

 このような状況下により、私たちの業界にも『不動産テック』の活用が注目されておりますが、中小の事業者にとっては、その活用自体ハードルが高いものでもあります。本会では、いざという時に様々な業務支援ツールが活用できるように、提携事業者との連携を図っており、今後も必要に応じた業務提携を推進していく予定です。

 しかし、ただ単にサービスや機能の利便性を訴えるだけでは、不十分だと感じています。「自分達の会社には必要ない」「業務効率化するほど物件数が多くない」「そこまで人材不足に困っていない」等といった意見を良く耳にします。ITリテラシーが低いことが業界全体を通した課題であると思いますが、少子高齢化に伴う人口減少と、それによる人材や後継者不足はさらに加速する事が予測され、それだけにITツールの活用やDXの推進は今後ますます重要性を増すと思われます。

 ITツールやDX推進を単なる業務効率化のためだけとしてとらえるのではなく、従来通りのやり方では、近い将来、仲介業者や消費者側から淘汰されるようになるという事を認識してもらう必要があると感じています。
不動産テックの導入により、自社の業務効率化が進み、顧客満足度の向上も望めるとは思いますが、特に賃貸管理の現場においては、最後は『人』であり、個々のスキルが重要になります。

 本会では、賃貸不動産経営管理士の前身である「賃貸不動産管理士」制度を立ち上げ、賃貸不動産管理業のプロフェッショナルの育成を推進してきました。本年6月に賃貸住宅管理業法が施行される今、賃貸管理業界における『キャリアパス』制度構築に向けて、賛同いただける団体とも連携していく予定です。

 私たちは、管理業務の質に関する是非は管理戸数の大小に寄るものではなく、いかに入居者に寄り添い、地域の特性を把握しているかによるものであると考えます。

 そうした特性は、地域に古くから根付く「地元の管理業者」ならではの強みを活かせる点でもありますので、会員業者が適切な賃貸管理業を実践できるように引き続き、『「住まう」に、寄りそう。』のスローガンのもと、事業を推進してまいります。

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不動産テック企業に聞く アクセルラボ 代表取締役 小暮学氏

求められる新しい付加価値 スマートホーム化の実現に向けて

 インターネットとつながり。生活に快適さと便利さをもたらす「IoT家電」が次々と発売される中、そのIoT家電をスマートフォン上で一元管理・操作できるアプリ「SpaceCore」(イメージ図参照)に注目が集まっている。開発を手掛けるアクセルラボの小暮学社長に、事業参入の経緯や事業への思いを聞いた。

 ――スマートホーム事業進出のきっかけについて教えてください。

 私は2004年にディベロッパー「インヴァランス」を設立し、首都圏を中心に投資用マンションなどを自社開発してきました。不動産経済研究所のデータでは、19年、20年と、2年連続で東京都内におけるマンション供給戸数で1位を獲得しています。その開発力のベースとなっているのは、ものづくりに対する徹底したこだわりです。より住みやすい間取り、より美しいデザインなど、ハード面に独自の価値を与えることで差別化を図ってきました。一方、IT技術の革新が続く中、住まいにもこれまでにない新しい付加価値が求められ始めています。その一つが「スマートホーム」です。この流れに対応すべく、インヴァランスの物件をスマートホーム化する部門としてアクセルラボはスタートしました。その後、海外でのスマートホームの需要拡大などを鑑み、今後は自社物件だけでなく、広く日本のユーザーにこのサービスを届けるべきと考え、17年に事業会社としてスピンアウトさせました。

 ――現在の導入状況はいかがでしょうか。

 インヴァランスの新築物件については、100%スマートホーム化を実現しており、中古物件においても入退去時にスマートホーム化の工事をおこなっています。また、ここ1年ほどで、ハウスメーカー様や賃貸仲介会社様などからの導入の問い合わせも急速に増えています。現在、賃貸マンションと新築戸建てを中心に、約1万7000戸に導入されています。

 ――20年に発表されました大東建託との資本提携は、どのような経緯だったのでしょうか。

 元々、インヴァランスが大東建託の100%子会社なのですが、共に事業を推進する中、インヴァランスのブランディングに「SpaceCore」が大きく貢献していることに大東建託が可能性を見出したのだと思います。今後、大東建託の物件にも「SpaceCore」を導入されることになると思いますが、賃貸事業において世界有数の規模を誇る大東建託のブランド力と「SpaceCore」の先進性が融合すれば、きっと今までにないシナジーが生まれると思います。

 ――横浜市住宅供給公社によるスマートホームの実証実験にも関わっていますね。

 最近は民間だけでなく行政においても、スマートホーム化への意識改革が進んでいます。横浜での取り組みもそうした背景のもとでスタートしたもので、東急電鉄様や美和ロック様も実証実験に参加されております。

 ――設立から3年半で急速に導入が拡大している印象の「SpaceCore」ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。

 インヴァランスというフィールドがあることが非常に大きいです。いかに優れたスマートホームのハードやソフトを開発しても、その性能を実証するフィールドがなければ、サービスとしての成長は望めません。その点、当社はインヴァランスの物件において機能を実証し、改善を続けてきました。その積み重ねが今、機能の充実とニーズの拡大につながっているのだと思います。

 ――今後のビジョンをお聞かせください。

 当社はスマートホーム事業におけるデファクトスタンダードになることを目指しています。かつて、ガラケーがあっという間にスマートフォンに取って代わられたように、住宅市場にも、スマートホームのパラダイムシフトが起き始めています。これはもはや不可逆的な流れです。いつか日本のすべての家をアップデートする。それを使命として、今後も機能の創造と充実を続けていきます。

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スマホで業務改善 紙の削減からコスト減も GMO ReTech

 IT業界で国内屈指の規模を誇るGMOインターネットのグループ企業で不動産テック事業を手掛けるGMO ReTechでは、不動産事業者のDX推進をサポートするサービスとして「GMO賃貸DX」をブランド展開している。2020年12月から21年1月にかけ、「オーナー向け」と「入居者向け」の2つのアプリをリリースした。

 アプリは、オーナーの負担軽減や入居者の利便性の向上を実現すると共に、管理会社の業務効率化や生産性向上、紙の削減によるコストの削減にも貢献するものとなっている。オーナーとチャットでのやりとりができる「メッセージ機能」、入居者の疑問に答える「チャット機能」や「FAQ機能」、オーナーに家賃集金管理状況等を報告する「月次収支報告機能」、修繕等のやりとりを見える化し進捗漏れを防ぐ「ワークフロー機能」、賃貸借契約書などの書類をデータで保存できる「ファイル保存機能」などの機能が実装されている。

電子契約書にも取り組む

 アプリ内のオプション機能も充実しているのも強み。中でも、インターネット総合企業であるGMOグループならではのメリットを感じさせるのが「電子契約機能」だ。国内で電子契約の基盤を開発しているのは、主にGMOグループと他1社のみである。それ以外の電子契約書サービスは、2社のいずれかを基盤で使っている。

 GMOグループは利用者に安心して使用してもらうためにも個人情報の保護には力を入れている。同社が提供する電子契約書は、電子証明書における高い信頼性を担保する「グローバル認証局」に認定されている。さらに、同社グループの「電子印鑑GMOサイン」(導入イメージ図)を実装したことで、押印業務でも高い信用性と安価な価格設定を実現した。鈴木明人代表取締役社長によれば、月額基本料8800円に1電子署名あたり100円からという価格は業界最安値だという。

 不動産領域におけるIT普及・拡大に積極的に取り組んでいる鈴木社長は「GMOが不動産業界においても〝いい会社だ〟と言っていただけるよう、アプリや電子契約のサービスを浸透させ、業界全体のDXと業務効率化に貢献したい」と意気込んでいる。

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空き家対策に採用 VR制作クラウドソフト スペースリー

 少子高齢化や地方における人口減少などによる空き家数の増加が社会問題となっている。そんな中、スペースリー(東京都渋谷区、森田博和社長)が運営する、どこでもかんたんVRのクラウドソフト「スペースリー」が、広島県が展開している「ひろしまサンドボックス」における、同県江田島市の実証事業「遠隔地の移住希望者に対する空き家バンク物件のバーチャル案内」に採用された(連携イメージ図)。

 江田島市ではこれまで、ホームページでの空き家情報の発信はしていたものの、充実した情報を提供できているとは言えず、問い合わせ数や成約数が十分ではなかった。そこで、オンラインでいつでも分かりやすく空き家情報を提供しようと考え、その上で効果的な360度VRコンテンツの採用に至った。

 江田島市が採り入れたスペースリーは、ウェブブラウザで再生可能な高品質のパノラマVRコンテンツを制作・編集・管理し、活用まで一括してできるクラウドソフト。2016年の開始以来、4年間で不動産やハウスメーカーなどの分野を中心に5000以上の利用事業者にサービスが提供されている。

 江田島市の担当者は「自分たちでも運用できる360度VRのITツールを比較検討する中で、使いやすく、高機能なのにリーズナブルということで採用しました」と語る。また、今後のオンラインでの接客の必要性も見据え、VRウェブ会議など営業に活用できる機能が充実している点も評価したという。

 空き家の状況は今、更に増加傾向の地域が多く、有効的な対策が喫緊の課題となっている。また他方で、新型コロナウイルス問題に対応したニューノーマルな働き方として、地方に住みながら都市部の企業で働くリモートワークや、観光地や帰省先など自宅以外の休暇先でリモートするワーケーションに注目が集まりつつあり、地方の空き家への需要は高まっている。

 スペースリーは360度VRによって、空き家対策といった社会問題への貢献と同時に、ワーケーションなどニューノーマルな働き方の促進にも貢献していきたいという。加えて地方行政分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を積極的に支援し、360度VRが当たり前に活用される未来の実現を目指している。

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